つるみん

アルカトラズからの脱出のつるみんのレビュー・感想・評価

アルカトラズからの脱出(1979年製作の映画)
3.6
【イーストウッド自身の脱出】

〝真昼の死闘〟〝ダーティハリー〟のタッグが描く実話に基づく脱獄映画。アルカトラズ刑務所、そこは脱出不可能と言われる孤島に設置された刑務所である。そこに入れられたのは幾度の脱獄を成功させてきた知能指数が優秀のフランク・モーリス。彼は今回も脱獄計画を企てているようだ…。

ドン・シーゲル監督作品、イーストウッド主演でのタッグはこれで5回目となる。非常に安定していて駄作を匂わせない、むしろ傑作だと言わせるような出来に仕上がっている。というのもエンタメ性を出すような欲もなく我々を惹き付けるようなシーンが続く。

なぜ惹きつけられたのか?

それはドン・シーゲル監督のセンスの良さである。いまや脱獄映画は何本も作られ新しいものが作られれば作られるほど迫力や音楽に頼りがちである。しかし本作品はあえて無駄な2、3秒間をつくる事により緊張感が増す。さらには劇中、音楽や効果音はほとんど使われていない。技術に頼らないことがリアルを生み出していたのだと思う。

しかし僕が1番気になったのは劇中に出てくる会話である。囚人仲間との食事の時間に来週の映画の話になる。すると友人の1人が「どうせ、くだらん西部劇だろ」と言い放つ。何秒間か沈黙が続き、次のセリフは「出口はある」というイーストウッドのセリフであった。
1970年代後半、時代はもはや〝スターウォーズ〟などの新しい映画史の時代に入っている頃、やはりイーストウッドという人物自体にまだマカロニ西部劇時代のイメージが強かったのだと思う。時代の流れにうまく乗れないイーストウッド自身が本作品を借りて本音を出したのかもしれない。完全に個人的な仮説になってしまったが僕はそうとしか思えない。

本当に脱出したいのはイーストウッド自身のイメージだったのかもしれない。
つるみん

つるみん