ちょげみ

ミッション:インポッシブル2のちょげみのレビュー・感想・評価

3.6
あらすじ
オーストラリアのシドニーにあるバイオサイト製薬会社にて働くネコルビッチ博士。
彼は自分の体にキメラという名のウイルスを打ち込み、ディミトリ(イーサンの別名)にアトランタまでの護衛を依頼する。
キメラは治療薬であるべレオフォンを売るために開発されたウイルスで、感染してから20時間すると必ず死亡する。
博士が依頼したのはディミトリだったが、実際はIMFに所属するアンブローズがディミトリに変装し護衛の任務にあたっていた。
しかし護衛にあたっているいるはずのアンブローズは、飛行機の中で博士が持っていたバッグを奪って彼を殺害。機長に扮して飛行機に紛れ込んでいた仲間達と一緒に脱出する。飛行機は乗客と搭乗員全員が眠らされていたため墜落した。

これを受けてIMFの上層部は、休暇でロッククライミングをしていたイーサンに急遽指令を下す。
盗みのプロであるホールという女性を仲間に加え、自分で選んだメンバー2人と共にキメラウイルスを奪還せよ、という内容のものだ。
スペインのセビリアにてホールを見事口説き落としたイーサンは、彼女とビリー、引き続き前回から登場する天才ハッカーのルーサーと共に任務にあたる。


「このメッセージは5秒後に消滅します。」

今回は監督をジョン・ウーが務めるということもあってアクション要素が強めで、前回の作品に色濃く出ていたスパイ要素は幾分影が薄くなりました。
バイクチェイス、スローモーションを多用した演出、迫力満点の銃撃戦、最終盤では1体1の肉弾戦が行われるなど、少々くどい...という感じは否めなかったけど、スパイ映画であるミッションインポッシブルに新地平を切り開いていたと思う。

しかし肝心のストーリーは控えめに言っても前回より薄くなってしまったかな...
キメラウイルスというのが蔓延したら世界中が大変なことになる、だから何としても悪用される前に奪還しなくてはならない、という骨子は分かるけども緊迫感というのが真に迫ってこない。
ウイルスで死亡したのは一名のみ、それも登場人物達の目の前で死んだわけではないからリアリティが今ひとつない。
ガリレオのショーケースの中の物語を見ているような、そんな感じでした。


今回の主人公達の任務はキメラの奪還だけれども、当人達に注視してみるとホールを巡る"恋の鞘当て"的様相を呈していた。
イーサンは彼女の心を一瞬のうちに鷲掴みにして、彼女に対して個人的な好意を抱いている。
しかし任務を優先するためには彼女を無下に扱わなくてはいけない...というところで葛藤を見せる。
それに対してアンブローズは彼女の元恋人。半年前にこっぴどく振られたのだがいまだ未練タラタラ。イーサンの作戦により彼女と再び邂逅することになった。

そんな二人が争うわけなんだけど、アンブローズがイーサンに勝っているところが一つもない。。。
度胸もそうだし、射撃能力、戦闘能力、知略、そして顔...すべてイーサンが勝っていて、アンブローズが勝っているところは強いて言えば部下の数くらいだったから、2人の戦闘はあまり対等だとは思わなかったな。。もうちょっとアンブローズに魅力を加えてもいいと思いました。


一作目では聖書のモチーフが用いられていたが、今作ではギリシャ神話にでてくる英雄べレオフォンと怪物キメラ、というモチーフが使われていた。

[べレオフォンは、ギリシャ神話に登場するコリントスの王。
ヘラクレス以前のギリシャ神話中では、カドモス、ペルセウスと並ぶ最大の英雄であり怪物退治者である。
神馬ペガサスに乗ってキメラを退治した英雄として名高い。
キメラは頭からライオン・ヤギ・ヘビの身体を持ち、口から火炎を吐く怪物。
べレオフォンはペガサスに跨ると高く飛翔してキメラを射殺した。]

べレオフォンとキメラは治療薬とウイルスだが、イーサンとアンブローズとの関係にも適用できる。
ラストで二人はバイクでアクロバティックな飛行を見せ、空中で体当たりするという意味不明なアクションを行う。
その後は砂浜にて殴り合いが行われ、最終的にイーサンがアンブローズを射殺する。
神話を物語に重ね合わせ、作品に多層性を持たせていたのは良かったと思う。


聖書、ギリシャ神話ときたから、次回はシェイクスピア!!が絡んでくると推測します。。。
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