ぺむぺる

ミッション:インポッシブル2のぺむぺるのレビュー・感想・評価

1.0
男臭さ全開のM:I。とある研究者の開発した致死率100%のウイルスとその特効薬が悪党の手に渡ってしまい、これらの奪還作戦に我らがイーサン・ハントが乗り出す。全編アクションに振り切ったシリーズ第2作は救いがたき凡庸さに支配された珍作。前世紀の映画の悪癖をまとい、もはや殉教者のような佇まいである。

前作で観客の心を掴んだのは、間違いなくイーサン・ハントの身体能力と精神力、それを必要とする舞台設定だった。ゆえに本作のアクション路線への変更は妥当な判断だったように思う。ただ、曲がりなりにも前作が指向した新しいスパイ映画とその主人公像への挑戦は、本作において完全に放棄され、ジョン・ウー映画の中で従来の(多分に007的な)怪しいダンディズムを持ったスパイが動くという、なんとも野暮ったくも男臭い映画になってしまった。いや、男臭さそのものが問題ではない。ようはポリシーの有無であり、一本筋の通った美学が本作からは見出だせないのである。ふたりのおっさんの香水を混ぜ合わせたところで、出来上がったそれは悪臭以外のなにものでもなかった。

未知のウイルスといった世界的なスケールをぶち上げたわりに、焦点となる悪役とのバトルが恋の鞘当の域を出ないのも、ヒロインに囚われの姫以上の価値がないのも、物語のキーポイントで使い古された入れ替わりネタに見栄を切らせるのも、すべては凡庸さのなせる技であり、本作がある種の映画の約束事の連鎖にすぎないことを告白しているようである。そんな背景の中では肝心のアクションさえもどこか浮ついて見え、クライマックスのバトルは主人公によるフルボッコの様相で、そんなバイオレンスに詩情はない。語り手のハートが見えない言葉の連なりなぞ発声練習と大差ないのだ。

ただし、そういう約束事で成り立つ映画なだけに突っ込みどころは満載で、役者の演技も良いため再見に耐えられるというのが唯一の救いだろう。個人的にアンソニー・ホプキンス演じる組織の上役の立ち回り方がツボ。すべての発端は彼の人事ミスであるにも関わらず、そうした責任を微塵も感じさせないばかりか、あまつさえ悪役と主人公の死闘を手玉に取るかのようなダークな魅力を振りまくのには笑ってしまった。日本社会であれば確実に、採用担当者・人事部長も含め懲戒免職ものやぞ。

また、悪役の小物感も良い味を出している。冒頭で示された「英雄を見つけるには悪役の存在が必要だ」という意味深なセリフは、この悪役をして寸分の狂いもなく英雄たる主人公の輝き如何に収束していくのである。
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