takanoひねもすのたり

ヘルハザード/禁断の黙示録のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

3.6
ラヴクラフト『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』を原作にしたゴシックホラー。

私立探偵ジョン(ジョン・テリー)の元に「夫の様子がおかしいので調べて欲しい」というクレア夫人(ジェーン・シベット)が訪れる。調べるうちに彼女の夫チャールズ(クリス・サランドン)の不審な行動と怪しげな実験の事実が明らかになってゆくという話。

探偵事務所に美人が訪ねてくる……といった冒頭のシークエンスは、何だかフィリップ・マーロウ味があった。
ビジネスライクに仕事を進めつつ、何だかんだと依頼者の彼女のことを心配するジョンの性格設定も似ているような(マーロウは小説のイメージ)

謎の親類から突然送られてきたスーツケース、祖先を辿ると自分に瓜二つの祖父の肖像画、孤立した農家、周囲に漂う悪臭、地下室の実験、黒魔術の死者蘇生、ロマンですなあ……もう好き好き大好き世界観。

要所要所にある惨殺死体のシーンは、部屋は血しぶきまみれ、動物に喰われたように骨しか残っていない遺体と、絵的なグロさも良き。

黒魔術の失敗作の人体の形を保っていない粘液でネロネロした赤い物体の造形や、水に浮かんで死漏化したような膚の目だけがギロギロした失敗作の姿もいい(そしてそれを村人は火に焚べたって演出もとても好き)  

地下実験室で火が消えて闇の中で化物とエンカウントしそうになるシークエンスは演出うまい。暗闇でどっきり……。

死者蘇生のメソッドと注意点が終盤で上手く活かされ小道具の使い方と伏線回収はきちんと。
ジョンは最後まで私立探偵らしい振る舞いで締めくくる。

爆発もあるのでお得感増し増し。