デニロ

33号車応答なしのデニロのレビュー・感想・評価

33号車応答なし(1955年製作の映画)
3.0
シネマヴェーラ渋谷「没後十年記念 俳優 池部良」にて。前の番組「フィルム・ノワール」はかなりの混雑だったけど、今回はそうでもないのかわたしの観た回は40人程度だった。

1955年のクリスマス・イヴ。夜勤に出掛ける前、妻司葉子と警察官の仕事を巡って喧嘩をしてしまった池部良。お互いに捨て台詞を吐いて別れたので気分が塞ぐ。夜勤パトロールの相棒志村喬は今晩にも5人目の子が生まれる予定の巡査部長。このふたりの乗り込むパトカーが33号車。

司葉子がなぜ警察官の仕事が嫌なのか。ひとりアパートの部屋で待つときパトカーや救急車のサイレンが聞える度に夫に何かあったのではないかとこころが波打つのだ。今日は夫と喧嘩別れした後に姉がやって来て、イヴのパーティに誘われて気分直しに付き合うことにした。

強盗の通報に急行するもヒロポン中毒の悪戯だったり、薬局からの通報で不審な男を追求すると一家心中で死に損なった男だったり、次々に色んな事態に直面していく。

司葉子がイヴのパーティの流れで外に出ると女の酔漢がふたりの警官に宥められパトカーに詰め込まれようとしている。それを見るやじ馬が女に乱暴するな、からだに触れるな等々勝手なことを言っている。それを見ながら改めて警官の仕事のつらさを思い、出掛け前の喧嘩を気に病んでしまう。

パトロールのふたりはスピード違反のタクシーを追いかけると気のいい運転手と乗客の若い娘が乗っていた。ここからサスペンスが始まる。

警視庁全面協力ということで、昭和30年の警視庁のパトカーとの無線でのやり取りを見ることが出来る。随分と乱暴なやり取り。早く、急いで、今何処だ。原始的。クリスマス・イヴの物語だけあって、先のタクシー運転手が息子に持って帰るラジコン・カー、その乗客の若い女性が兄弟に贈るというオウムは、観客がその後の展開の謎を読み解くしるしになる。唐突に出てくる浮浪児を集めて養っているという篤志家なんて、それだけで怪しい。犯人役の平田昭彦がサイコパス的な犯罪者を演じていて、こっちが実像ではないかと思ってしまう。

司葉子は田舎の山暮らしの娘という設定だけど、とてもそんな風には見えません。デヴュー2作目の清潔感漂うちょっぴり可愛い新妻を演じています。

冒頭の数分間と終わりの数分間のフィルム状態が良くなく、夫婦喧嘩のきっかけが良く分からない。

1955年製作公開。脚本谷口千吉 、池田一朗 。監督谷口千吉。
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