せみ多論

オーケストラ!のせみ多論のレビュー・感想・評価

オーケストラ!(2009年製作の映画)
4.1
すごくいいシーンもあるけれども、気になるところも。まず主人公アンドレイはとある理由でアル中になってしまっている、元指揮者。彼がアル中である演出をもっと大げさといえばあれですが、やってよかったのではないか。多少ご都合主義に見えるかもしれないけど、最後の舞台に立つ、ソリストのマリ・ジャケと目が合う、するとそれまで震えていた指がぴたりととまるくらいにしたら、そこから一層張りつめた空気が生まれたのではとか妄想してしまう。(もしかしたらそういうシーンがあったかも…ごめんなさい)
とにかくラストシーンは皆さんもおっしゃる通り、とても素敵でパワフルで生命の力強さを感じる。アンドレイたちはジャケの姿にフラッシュバックさせられようにジャケの母を思い出し、その場面が交錯する。運命のコンサート中の美しい彼女、
そして極寒の地で、もう楽器を持つことも許されなかった彼女。
肩に髪に、ソリストの命である手にも雪は振り続ける
それでも彼女は演奏をする、
バイオリンはその手にない、聴衆は愛する人ひとり。
それでも彼女は生きてきた証を見せる。
ソリストとしての彼女を。最後の晴れ舞台を。
このシーンは泣けます。
序盤は多少ゴチャゴチャとしていますがこのラストに向けて収束していく清々しさもあります。
二回見て最初とは意見が変わり、お勧めできる映画だと思えた作品です。
せみ多論

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