オトマイム

セカンド・サークルのオトマイムのレビュー・感想・評価

セカンド・サークル(1990年製作の映画)
4.3
「この映画は今のソ連を象徴する」という監督自身のコメントを聞くまでもなく、あらゆる暗喩に満ちていることはじゅうぶんに窺い知れる。老いた父の孤独死。息子である青年と他者との会話・やりとりがすべてどこかちぐはぐで不思議の国ならぬ不気味の国に迷いこんでしまったかのよう。
話じたいはシンプルで映像に集中することができた。ソクーロフ作品は、とくに人物のショットの力強さ美しさにドキドキさせられる。医者とのスリーショット(真ん中の人物はどう見ても子供ではないか?)、父親の深く刻まれたしわ、カメラが回ってるのか静止画なのかわからないほど長回しの横顔…

浴室に積まれたゴミが生活道具のすべて。雪吹きすさぶ極寒の中、水道も止まり、何年もの垢と臭気を溜めこみじっとりと重くなった薄いふとん。すべてが荒んでおりすべてが遣る瀬無い。ソクーロフは他の何にも似ていないと思う。すばらしかった。