一人旅

レバノンの一人旅のレビュー・感想・評価

レバノン(2009年製作の映画)
3.0
第66回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞。
サミュエル・マオズ監督作。

レバノン戦争を舞台に、4人のイスラエル軍戦車兵が目撃する戦争の実態を描いた戦争ドラマ。

実際にレバノン戦争への従軍経験のあるサミュエル・マオズ監督による異色の戦争(戦車)映画。1982年、イスラエルがPLO(パレスチナ解放機構)の壊滅を目的として隣国レバノンに侵攻したレバノン戦争に材を取った作品で、訳も判らぬまま前線に送り込まれたイスラエルの若き4人の戦車兵の姿を映し出しています。

特徴はほぼ全編に亘って撮影カメラが戦車内部から出ないこと。外の光景は戦車のスコープ越しに見た映像のみで映し出され、それ以外については、4人の戦車兵が押し込められた戦車内部の窮屈な映像のみ。戦争の悲惨な実態―爆風で四肢がもげた市民、市街に転がる遺体、娘を失った母親の発狂…が戦車のスコープ越しに生々しく描写されると同時に、運命共同体と化した4人の戦車兵が抱く恐怖と絶望が仲間同士の心理的衝突となって発露してゆく様子が描かれていきます。

戦車兵の視点で戦場を概観した異色の戦争映画。操縦担当、砲撃担当、装填担当…と明確に分業化された戦車兵の組織体系も興味津々であります。
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