せみ多論

ソウのせみ多論のレビュー・感想・評価

ソウ(2004年製作の映画)
4.2
初めて本作を見たのは学生の時分ではありましたが、シリーズ最後まで見ていなかったので、改めて最初から見直してみました。
ソリッド・シチュエーション・スリラーの名作と言われるだけあって、やはり面白い。(調べてみるとソリッド・シチュエーション・スリラーという言葉自体が本作で初めて使われたという話も)

この第一作は低予算であってもアイデアと見せ方で面白い映画を作ることは可能と言ってくれている、そう思うと、個人的にはとても嬉しい気持ちになる。
いわゆる、お金がかかっているのはわかるけれども…な映画が大嫌いな自分にとっては、それだけでも肩入れしたくなる類の映画。

メインの舞台となる老朽化したバスルームの独特の薄汚さと言うか、不潔すぎないような不潔さ。シリーズを通して一番印象に残るレコーダーから聞こえるあのセリフ”I want to play a game.”とピエロの人形。
このホラー的な部分は個人的にはお気に入り。目を背けたくなる、とうのはホラー、スリラー、サスペンスにはほめ言葉でしょう。

ただ唯一気になるのは、制作陣の方々は第何作までを想定してこの1を撮られたのかということ。
ラストシーンでゴードンとアダムの生死は明らかにされず物語の幕は降ろされる。
全作を観た感じでは、1からの登場人物での話がある程度まとまる3作目までは想定されていたのかなと言うような印象も受けるが、はてさて。

そしてシリーズを通しての感想になってしまいますが、自分が一番上手いなと思う部分は、3以降のグロテスクなシーンや、雑だと思わせる展開に、あぁその部分はジグソウがやってないから、という、強引ではあるけれども納得のいく理由がある点ですね。
彼の後継者として不足であるから、意志を継いでいない部分があるから、そうなるのかと一応の辻褄が合う部分が、映画として面白いかどうかは別にして、上手いなと思ってしまう。

もう一つ、特に2の、ジグソウを演じるトビン・ベルの表情が、もうナントモ最高。あのすました様なのぞき込む顔は名演と言うほかないでしょう。大好きです、あの表情。

残念だなと思う点といえば、シリーズの蛇足感、作を重ねるごとに増してくる、ジグソウの俗っぽさ(ここは彼に対する共感も湧くので一概にマイナスとは言えないですが)、そしてあの豚ちゃんマスクを被ってる人々の無敵モードっぷり。あれを被るとどこにでも侵入出来て、誰でも連れ去れるんかいな、というね。

まぁ続編の出来は別にして本作は満足なのです。
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