明石です

動く標的の明石ですのレビュー・感想・評価

動く標的(1966年製作の映画)
4.3
蒸発した夫を探してほしいという富豪の夫人からの依頼。動く標的とのタイトル通り、事件を追ううちトカゲの尻尾切りの要領で探す対象が変わっていき云々という話。世界1セクシーなナイスミドル、ポール・ニューマン主演のハードボイルド探偵物で、ロス・マクドナルドの原作は最近好きな翻訳者さんによる新訳が出ていたので、先に読もうか迷いつつ本作を鑑賞。なんてったってポール・ニューマンが主役!がっかりさせられるわけがない、と思っていたらその通りでした。良作。

主人公が気だるげにベッドから出て起き抜けのコーヒーを淹れ、不味そうにすする序盤のシーンからこれは見てよかったと確信。(知名度とDVDの流通具合からして)殆どジャックポットを引き当てた気分笑。優れた小説は主人公を取り巻く細かな描写に読み応えがあるものだけど、まさにそんな感じ。そしてポールニューマンは言わずかなハイパーセクシーで、ハードボイルド映画は個人的に好きでけっこう見てきた中でも、この人が一番だと思う。「君のラブソングは買えんな」とか、「シンデレラ探しに王子様に雇われたかったよ」とか、キザで気の利いたザ、ハードボイルドな台詞がこれほど似合う人ちょっと見つからないと思う。

そしてヒロインはなんと往年の大女優ローレン・バコール。さすがに少しお年を召してはいるけど、海のように透き通った青色の三白眼が印象的な、威風堂々たるお姿。蒸発した旦那の捜索を依頼する彼女の「離婚する気はないわ。長生きして死ぬまで見届けるの」というのは、実生活でバコールが最期までボギーに添い遂げたことを思うと素晴らしく説得力のあるメタ発言ですね。ただ彼女の側のストーリーがきちんと畳まれていない(2時間もあるのに…!)ところは若干消化不良というか、まあ詳しいことは原作を読めということなのだろうと理解した。てなわけで近いうちに読もう。

——好きな台詞
「この世に善人はゴマンといる。だから図々しいのが勝つのさ」
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