【1967年キネマ旬報日本映画ベストテン 第9位】
『香華』を最後に松竹を退社した木下惠介の復帰作。青春スターの夏木陽介、『愛と死をみつめて』大空真弓が主演をつとめた。
木下惠介にしては著しく精彩を欠いた作品。叙情的で美しい映像と確かな演出力は健在だが脚本が雑でキャラクターの描き込みも薄い。
孤島に来た先生が子どもたちと交流する、というと当然『二十四の瞳』が思い出される。しかし本作はそこから社会性と厳しさを抜いた、生ぬるい出来になってしまっている。
そもそもなぜバレーボールなのか。家田は別に選手だったとかいうわけもなくいきなりバレーボール。東洋の魔女の時代だったから、としか思えない安易さ。
一人ひとりの生徒の描写がほぼなく、キャラクターとして成り立っていない。せめて選手に選ばれた9人くらいは描くべきでは。
全員が親に「バレーボールなんか」と反対されるのだが、いつの間にか練習に来るようになっている。一人来ない男児の親には家田が喧嘩をふっかけて勝つ。まさかの物理…そりゃないでしょ。
そして他は男子だけのチームな中、男女混合の小手島チームが優勝する。流石にそれはフィジカル的にあり得ないのでは。そうするならなぜ勝てたのか、精神面でも肉体面でもその理由付けをしっかりしないと。
また木下惠介は厳しさや逆境を描きたくないのかな?と思うくらい家田の奮闘や小手島への差別、偏見はほぼ描かれない。入場したときくらい?その後は別にそういう描写はない。
後半試合シーンだけでよくみせたなという演出力は感じた。そこは流石。
でも木下惠介にしては男女観が旧態依然としすぎていないか。家田は結婚の約束を放って女を待たせるだけ待たせる。「あなたは男の中の男よ」「お前も女の中の女だ」もどうなんだろう。女は男に従って待つのがいいってこと?キノケイとは思えない古い考え。
悪くはない。確かな演出力でとりあえず最後まで見続けられるし、島の美しい風景を捉えた撮影が素晴らしい。
もっとよくする余地はあったのにと思うと残念。凡作、と言うしかないかな今は。