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紙屋悦子の青春のQIのレビュー・感想・評価

紙屋悦子の青春(2006年製作の映画)
3.8
この時期、戦争をテーマにした作品がTLをにぎわせている中、自分の頭に浮かんだのが『父と暮らせば』の黒木和雄監督の遺作となったこの作品。

『父と…』と同じく戯曲が元になった会話劇です。

主人公紙屋悦子(原田知世)は東京大空襲で両親を亡くし、鹿児島で暮らす兄夫婦の家に身を寄せます。

兄安忠(小林薫)は九州の軍施設で働き、妻ふき(本上まなみ)は悦子の同級生。

そして安忠の後輩、明石(松岡俊介)とその親友永与(永瀬正敏)。

登場人物はこの5人だけ。

直接的に戦争が描かれることはなく、市井の人々の日常生活とその会話だけで物語が進むのは、なんとなく『この世界の片隅で』の雰囲気に似ているかもしれません。

当時の若者たちは戦争とどのように向き合い行動したのか。

悦子、明石、永与3人の交錯する想いに戦争がおとす影。

その想いを素直に言葉にできない当時の状況。

淡々と進む物語の中で、唯一悦子が感情を爆発させるシーンに胸が痛みます。

戦争は人の命を奪うだけでなく、生き残った人たちにとって生涯消えることのない傷跡を残すことを観る者に静かに伝える作品です。

そして驚きだったのが女優本上まなみの素晴らしさ。(本上さんいまさらスイマセン)

他の4人が本音をなかなか語らない中、彼女だけが思ったことを素直に言葉にするという、会話劇での重要な役割を見事に演じていました。

もちろん原田知世も大変素晴らしかったです。

…というか彼女目当てで観に行った作品だったことを素直に認めつつ+0.3w
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