くりふ

ポーリンの冒険のくりふのレビュー・感想・評価

ポーリンの冒険(1947年製作の映画)
3.5
【元祖アクション・ヒロイン、飛ぶ!】

連続活劇のスタア、パール・ホワイトをベティ・ハットンが演じた伝記映画。

といっても史実はけっこう加工して、ベティ・カラーを強めたようです。彼女の元気印(死語)が全面に出ていて、特に中盤が楽しい盛り上がり。

世間的には『アニーよ銃をとれ』の方が知られ、評価も高いのでしょうが、無声映画時代のアクション・ヒロインという魅力で、私はこちらも好みです。

パールと言えば淀川さん。少年時代、初の「愛人」(笑)だったそうですからね。「映画塾」で彼女を語っている回を読んで、キホンを再度、教わりました。

農場に生まれ、乗馬が得意だったのでサーカスに出演するようになり、そのキャリアを生かして女優に進出した、という出自のようですね。さらにIVC版DVDの解説文で、幼い頃から旅芝居に出演、ともありましたが、アクション・スターとしての素養は元々、持っていたわけですね。

が、本作では歌好きなおかげで劇団に入れて、ホニャララ後、映画界へ…という展開。でも歌えたのかな? 演者に合わせた後付けじゃないだろか?この設定でミュージカルな見せ場が増える一方、彼女の生き様としては、ちょっとピンボケしちゃった気がします。実際は歌、どうなんでしょう?

逆に、高い筈の身体能力は「パンチ力」を持たせるだけで押し切ってる(笑)。ベティの得意技を優先させて、ちょっとアンバランスになったんじゃないか。

とはいえ、映画界へ飛び込んで、離れるまでが、やっぱり面白いです。

パールが初めて訪れる撮影所が、もぉ無茶苦茶にカオティック!文字通り横並びのスタジオで、マック・セネット風コメディを始め何本も、同時撮影して銃声、獣声、奇声が飛び交う!でもってパイも飛び交う!!(笑)

で、パールと組むことになる映画監督が、山師臭ぷんぷんでいーんですよ。彼にひどい目(これが映画史的な素晴らしさで爆笑)にあわされ大爆発!ひょんなことからアクション・ヒロイン誕生っていう強引元気印な展開。

勿論、この撮影所描写は誇張されてるでしょうが、最近チラ読みした、グロリア・スワンソン自伝で書かれていた、黎明期のそれに似てるんですよ。この熱気や、無茶な感じなど、エッセンスは再現出来てるのではと思います。

また、舞台俳優のプライドと映画の落差を手際よく生かす辺りなどはうまい。パール快進撃を、ストレートに追ってゆく辺りまでは、とにかく楽しいです。

が、ラブラブ要素が高まってくるとだんだん…失速して来ちゃいますね。相手役ジョン・ランドが硬く、元気印のベティはうっとり系がイマイチ。

そして、結末はあまり感心できません。一人の女の生き様としてみても。パール・ホワイトの実績を否定するようにも、思えちゃうんですよ。

監督役の他、ベテラン舞台女優役コンスタンス・コリアーの代理母ぶりや、腐れ縁になる友ビリー・デ・ウルフの、濃笑三枚目ぶりなど(発生法が爆笑)、脇を固める個性はなかなかに粒ぞろいで、飽きなかったのですが…

お話としては、歌って、走って跳ねて、大空高く飛んでまで見せたのに、着地でコケちゃった感じがして、ちょっと残念でありました。

<2012.7.1記>
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