マヒロ

十字砲火のマヒロのレビュー・感想・評価

十字砲火(1947年製作の映画)
4.5
(2024.2)
マンションの一室で男が殺されるという事件が起き、警部のフィンレイ(ロバート・ヤング)は直前に彼と会っていた戦争帰りの3人の兵士に捜査の目を向ける。捜査中に現場にやってきた3人のうちの一人であるモントゴメリー(ロバート・ライアン)等に話を聞きつつも、現場に財布が落ちており行方が分からないミッチ(ジョージ・クーパー)という兵士が第一容疑者となるが、彼の上官であるキーリー(ロバート・ミッチャム)をはじめとする周りの人間はミッチはそんなことが出来る人間では無いと口を揃えて証言し……という話。

殺人事件を巡るミステリーという体を取りつつも、その根底に“人種差別”という根深い問題を孕んだ社会派な作品。
犯人についてはあまり隠す気が無く、割と早い段階で観客側は察しは付くが、では何故殺しを?というところが明らかになるにつれて、その思想がメッキを剥がすように見えてくるのが面白い。物語運びは結構淡々としており、劇伴も殆どなく登場人物達もそれほど感情を露わにする場面が少ない淡白さがあるので、その中で当然のように差別的な考えを振りかざす犯人の怖さが際立ってくる。冷静に事件を追うフィンレイ警部と、意外と部下思いなキーリーのキャラクターがまた良くて、どちらも一見冷たそうで芯にはアツいものを秘めているというこの映画を象徴するような性格のキャラクターで格好良かった。

かなりシリアスな題材を扱ってはいるものの、声高にその主張を押し付けるようなところはなく、登場人物の感情の移り変わりをじっくりと描きながら深いテーマに踏み込んでいく上品さのある作品だと思った。
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