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警視庁物語 十五才の女のcatmanのレビュー・感想・評価

警視庁物語 十五才の女(1961年製作の映画)
5.0
ネタバレ気味です。

1961年公開のシリーズ第16作。セット撮影が比較的多かった前作と打って変わって多摩川周辺によるほぼオールロケが嬉しい。やっぱり警視庁物語はこうでないと。一方で今回はこれまでの作品にはあまり見られない悲惨な事件が扱われ気分が沈む。多摩川に死体が浮かんだ被害者は15歳の少女。米軍相手の売春の末に脳梅をうつされ発狂してしまった母親を介護しながら、少ない生活補助金の足しにするため自らも身体を売り歩いていて、ラーメン(支那そば)一杯でもやらせてくれるため客連中からは「ソバパン」などと呼ばれている(売春婦=パンパン)。さらには役所の福祉担当者から補助金をエサに関係を強要されているという15歳の少女にとって出口の無い地獄の様な状況で、もう絶望しかない。
なんだけど、刑事たちは切ない表情を見せながらも強い義憤に駆られる様子は見せず、例によって地道に淡々と聞き込みを重ねて粛々と職務に取り組むんである。これが実に良い。もちろん多彩な屋外ロケは見どころが多くて川沿いのバラックなど社会の底辺を映し出す風景が強烈。
犯行の様子を二者の視点からそれぞれの再現映像で見せる羅生門スタイルは面白いんだけど、やっぱりこのシリーズの特色であるドキュメンタリータッチからは浮いてしまっている。それでも全てを見せず結末までは語らないラストは良い。
それにしても今回もまた最低のクズ野郎にキャスティングされた今井俊二が些か不憫ではある。被害者の遺留品かと思って川岸で拾い上げたら、うんこが付いた男性用サルマタだった山本麟一にはもはやお笑い担当の気配が。あと前作に続いて新人時代の千葉真一が登場。63分。
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