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テレマークの要塞の一人旅のレビュー・感想・評価

テレマークの要塞(1965年製作の映画)
4.0
アンソニー・マン監督作。

ナチス・ドイツ占領下のノルウェーを舞台に、重水工場を破壊するため死力を尽くすレジスタンスの活躍を描いたアクション。

『グレン・ミラー物語』(1954)『西部の人』(1958)のアンソニー・マン監督が、二次大戦時1943年にノルウェー人特殊部隊がナチス・ドイツの管理するテレマーク地方の重水工場(※重水とは核兵器製造に必要な水のこと。破壊目標となる工場は当時ヨーロッパで唯一の重水生産工場)の破壊に成功した「ガンナーサイド作戦」(※本作戦はノルスク・ハイドロ重水工場破壊工作の中の一作戦。他の作戦として、工場の周辺地域に少数のノルウェー人を送り込んだ「グルース作戦」と英国特殊部隊が軍用グライダーで先遣のノルウェー人部隊と合流する「フレッシュマン作戦」がある。本作ではグルース作戦とフレッシュマン作戦も描いていますが、お話の中心はガンナーサイド作戦になります)を題材に映画化した戦争アクション大作。主演はリチャード・ハリスとカーク・ダグラス。

登場人物等に脚色が施されていますが、作戦の基本的プロセスは事実に基づいています。レジスタンスのリーダー(R・ハリス)とオスロ大学物理学者(K・ダグラス)を筆頭に総勢9人のレジスタンスが、重水工場に潜入し重水生産装置に爆薬を仕掛け破壊したのちに、残った重水のドイツへの輸送を阻止するため奮闘する姿を活写しています。映像的な見栄え(敵との熾烈な銃撃戦や爆撃シーン)は他の戦争アクション映画に劣りますが、雪原でのスキー移動と追走劇、工場内における隠密行動、さらには時限爆弾のタイムリミットが迫る中、一般人の命を救うため奔走するクライマックスまで少数精鋭型戦争映画としてのスリルと緊張が持続します。

「大勢の命を救うためにはある程度の犠牲は仕方がない」とする物理学者と「たとえ少数でも市民を作戦の犠牲にすることは許されない」とするレジスタンスの考え方の相違・対立と、少数の一般人を救うために前言撤回の勇姿を見せる物理学者の心境の変化、さらには物理学者と元妻の愛の再燃やレジスタンスの夫の帰りを待ち続ける身重の妻の哀しみといった、作戦以外の人間ドラマも多岐に及んでいます。
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