evergla00

愛と死の記録のevergla00のネタバレレビュー・内容・結末

愛と死の記録(1966年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

【砂の器 重症版】

広島のカップルの実話を基に作成したとのことですが…

何ゆーとるか分からんじゃけぇPart 2

状態でした。(ちなみにPart 1は「狐狼の血 LEVEL 2」)
何度も再生したり、スローモーションで確認したりしても、台詞がほとんど聞き取れず、鑑賞にとても時間がかかってしまいました。内容を調べてから再挑戦。

***

誤解が解けた途端、嬉しさのあまり手を繋ぎはしゃいでしまう😊和江と幸雄のカフェデートが初々しくて、可愛らしい。
太陽を浴び、潮風に吹かれていると、愛情と期待が自然と胸を満たしてくる。
この輝かしい瞬間に、生きることの幸せと喜びを噛み締めつつ、10年後の状況を悲観する。

大切な人を突然失うことは、それほど珍しい不幸という訳ではない。
では何が彼らの物語を、特別な悲劇にしているのか。

それは、戦争孤児や、原爆症、被爆者への差別、適齢結婚して健康児を産まなければならないという女性蔑視がはびこる社会でした。

原爆がなければ、少なくとも被爆による様々な健康被害はなかったでしょうし、寿命も延びたでしょう。
しかし、若い2人に立ちはだかった壁は、それ以前の問題であるように思いました。

心中に似た行為は、現在よりまだありふれた時代だったかも知れませんが、どうしたら和江は生きれたのか、いや、どうして和江は死を選んだのかと考えると、原爆は、ただ命を奪っただけでなく、愛を育むことのできない世界を作ってしまったのだと感じました。

「砂の器」では、病気への偏見が原因で、父と子が離れ離れに生きます。地位を捨てて、差別を受け入れ、堂々と父への愛を表明する勇気など息子にはなく、自分が社会で生き抜くために父親を捨てています。その点、幸雄が病床に伏せても和江は変わらず彼を愛し続けるし、妻になるとまで宣言します。幸雄になかなか事情を打ち明けてもらえない辺りから、既に彼女は不完全燃焼気味でした。彼女には、愛する人の全てを受け入れて生きていく強い覚悟がありました。見返りを求めない真実の愛です。それでも家族は彼女を応援しません。いずれ幸雄が逝ってしまうにしても、納得のいく最期…自分と知り合ってからの幸雄の人生全て…を見届けたと思えれば、なおかつ、幸雄との愛を全うすることを認めてくれる家族がいたなら、和江はもう少し生きていけたのではないかと思いました。

幸雄の死後、明るく振る舞う和江の様子に反し、不安と恐怖を煽るような曲が流れ、そこからは最後まで一気に怒涛の展開でした。

何度も登場する「橋」は、男女の仲や、あの世とこの世を繋ぐ象徴でしょうか。

「愛とは何ぞや。」
人間は誰もが受け取る価値があり、与える力がある。
そしてそれを阻むのもまた人間である。

今生きている人に、生きるなとは言えない。
愛を宿した人に、捨てろとは言えない。
全力で生きて、愛せばいい。

まさに、愛して死した2人の記録でした。

吉永小百合さんは、かなり高い段差をひとっ飛び!駆け足も速く、その脚力の強さにびっくり。

それと!
SL列車が通る前、2本の踏切遮断機が上からスーッと平行に降りてくるのです!激レアなものを観れた気がして、カップルの熱い抱擁より、踏切に感激しちゃいました。

和江と兄嫁が居間で何かを削っていますが、あれは何ですか?

撮影現場を、車内から身を乗り出してガン見している人々、我慢できずにチラチラ振り返るエキストラらしき人々が面白いです。建造物も乗り物も、随分変わりましたね。

「人間の愛情を確率や計算だけで量るのは大きな過ちですからね。」

「本当の愛情は、肉体や物質の条件を超えているものじゃぁないか。」

***

ちちをかえせ ははをかえせ
としよりをかえせ
こどもをかえせ

わたしをかえせ わたしにつながる
にんげんをかえせ

にんげんの にんげんのよのあるかぎり
くずれぬへいわを
へいわをかえせ

峠 三吉
evergla00

evergla00