逃げるし恥だし役立たず

ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場の逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

3.0
朝鮮戦争やベトナム戦争で抜群の戦功を重ねた軍曹トーマス・ハイウェイ(クリント・イーストウッド)が再び古巣の海兵隊に志願し、落ちこぼれ集団を鍛えて、第三の戦場グレナダへ向かう姿を描く戦争ドラマ。
屈強で百戦錬磨の強面教官と対立しながらも、反発していた軟弱な海兵隊員を徐々に成長させていく謂わば王道のストーリー。戦場では超一流でも現実社会の生活と元妻アギー(マーシャ・メイソン)との関係は三流以下のハイウェイの云う所の『臨機応変』の方が『ハートブレイク・リッジ(=心の張り裂けそうな(激戦の戦場と成った)隆起した場所)』よりは本作のタイトルとして個人的にしっくりくる。意表を突いたロケーション、グレナダでの銃撃戦、緊迫したクライマックスにヘリコプターが現れる鮮やかなショット、愛国の象徴である国旗への拘りの演出は見事。腕が立ち老若男女からも慕われるヒーロー像は健在で、俳優イーストウッドが自身を嬉々として演じているのは観ていて爽快である。
だが一方で、彼の演じる古参兵が80年代のマッチョイズムのアメリカ其の物を象徴していて、個人的には此の様な戦争賛美とも取れる映画は好きになれない。ベトナム戦争以降は大義ある英雄的戦争は最早存在せず有難迷惑な軍事介入に勤しんでいた冷戦下に此れ程迄に思想性が希薄な戦争娯楽活劇が撮れる所に違和感があり、まして未だ評価が定まらないグレナダ侵攻で学園ドラマの様にフィーバーされても正直唖然とするばかり。いっその事、生徒と教官の設定はそのままに、戦争以外のテーマで撮り直してもらえないだろうか…