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恋は足手まといのemilyのレビュー・感想・評価

恋は足手まとい(2005年製作の映画)
3.4
19世紀末のパリの社交界。一文無しのプレイボーイ・エドワール夢中の可憐な歌姫リュセット。エドワールは伯爵令嬢との結婚が決まっており、彼女に別れを告げようと豪邸にやってくる。リュセット目当ての男たちが続々とやってきて、養育費をねだる男もいれば、物で彼女の気持ちを引こうとする男も。エドワールは結婚のことを告げることできないまま当日を迎えてしまい、リュセットは歌を歌うため結婚式にも招待されており、さらにドタバタ劇でなんとか切り抜けようとするが・・

19世紀を感じさせるレトロな家具、エドワードは鏡越しに観客に話しかけるように、意気込みを見せる。扉の音を巧みに操り、場面や会話劇の切り替えを行い、忙しいドタバタ劇をリュセットをめぐる男たちと共に繰り広げられる。彼女がバタンと扉が開き出ていき、男の元へ違う男がやってきて、あらぬことを吹き込む。あらゆる恋の駆け引きにリュセット演じるエマニュエル・ベアールの美しさが豪華なドレスに身を纏い際立っている。

畳みかけるような会話劇と、終始人が入れ替わる忙しさ。登場人物も多いので、それぞれの人物像を読み取る作業をしていると、どんどん会話が流れていってしまう。観客もまるでその場にいるせわしさを共有できる。しかし美しい歌声や優雅な音楽に包み込まれており、19世紀ならではの世界観にうっとりと心はどこか穏やかな気持ちに、忙しさも心地よさに変化していく。

ドタバタしてるのにどこか優雅。
濃密に構成された会話劇なのに、それに踊らされるより、優雅な世界観にうっとりしながら、楽しむのがちょうどよい。鏡使いもよく、銃が扇子という演出も小粋。結婚式のシーンではあたふたするエドワールにピアノの調べが重なり、サスペンスフルな展開を喜劇の枠にしっかり落とし込み、どんどんコメディのリズムとスピードが加速していく。奇想天外なベッドシーンもあるが、一気に畳み込まれるというより、徐々に上がっていく感じ。前半でそのスピード感に慣れてるので、終盤の畳み込みも違和感なく、そのリズムにのり最後まで引っ張っていってくれる。

こんなドタバタ繰り返しても最後は収まるところのカラっと収まるラストも爽快。恋ってめんどくさい。人のドタバタ劇を見るのは何も考えず楽しめる。自分のこととなると、だれだって必死になるけど、それもまた傍からみたら、ただのコメディ。
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