てつこてつ

死海殺人事件のてつこてつのレビュー・感想・評価

死海殺人事件(1988年製作の映画)
3.0
先日、三谷幸喜版のクリスティミステリー「死との約束」を視聴したばかりなので、ピーター・ユスティノフがポアロ役を最後に務めたこの同じ原作を映画化した作品を再視聴。

原作自体に、「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」「クリスタル殺人事件」「ねじれた家」「そして誰もいなくなった」「アクロイド殺し」にあるようなトリックの凄さや重厚なストーリー性、そしてびっくりする真犯人像にある・・って要素がないので、やはり、せっかくの死海地方でのロケを敢行しても全体的な地味さが否めない。

キャストも、ローレン・バコールはやはりオーラ凄いけど、レイア姫キャリー・フィッシャー、テレビの刑事ドラマで70年代後半に日本でも大ブレイクしたデヴィッド・ソウル、「キャリー」の狂信的な母親役が印象的なパイパー・ローリーとか、やはりこれまでのポアロ物の映画化作品と比べて小粒感・・。

最大の見せ場である事件の真相をポアロが解明するシーンの演出も、ちょっと物足りない。

Wikipediaで調べてみたところ、「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」「地中海殺人事件」「クリスタル殺人事件」とは制作陣営がまるで異なり、それまでB級作品を中心に手掛けてきたプロダクション会社であったとの表記・・なるほど、それで色々と納得。

三谷幸喜版は、原作の換骨奪胎が上手く、舞台を熊野古道に変え、それに併せて犯人が殺人時に天狗に扮装するというのもロケ地に見事にマッチ。何よりも、ストーリーの冒頭に犯人の過去の素性を明かしてしまうという大胆な脚本だが、視聴後には事件発生時のトリックにも視聴者的に合点がいくもの・・もしくは、冒頭のあのシーンが無ければ真犯人像に納得が出来かねる畏れがあったので、結果的にあっぱれでした。
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