ろく

ジーンズブルース 明日なき無頼派のろくのレビュー・感想・評価

3.5
中島貞夫は抜群の素材を凡作にする天才である。

といきなり悪口を書いたけど、あの(どうやっても面白い)、温泉芸者シリーズで唯一の笑えない「温泉こんにゃく芸者」を撮っていたし。さらにはまむしの兄弟シリーズではその面白いんだかとほほなんだかもうわからない(しかも行き過ぎてはいない)展開に胸をアツくした。モンド似非ドキュメンタリーでは最後はなぜか説教で終わるという見ているものの頭をうなだれさせる展開。そう、中島はソクブンや石井輝男とは違い、妙に安全地帯に落ちてしまうー映画としての凄まじさーがない映画監督なのよ。なのにたまにトンデモない写真を撮るから癖になる。

今作もそうで、ファムファタール梶芽衣子に実践100段渡瀬恒彦というどうあがいても面白くなりそうな二人を主軸に据えながらもひたすら凡庸。ボニー&クライド的な逃避行をメロウな音楽を主軸にしてただひたすら撮っていく。ああ、これぞ、中島イズム。でもその「退屈さ」こそ中島なんだよ。

まあ逃げる→追う→反撃→殺人のループなんでどんな話かは分かるでしょ。もうどうでもいいよと思って適当に観るわけ。はいはい、中島作品だから大丈夫でしょ。

なのにねえ、、、、、なのになのに。なんだあの最後は!すいません、圧倒的に白旗なんですよ。もうあの最後だけで吃驚ですよ。もう鼻血止まらないですよ。ショットガンを持つ梶芽衣子。この画だけ。そして脳天を打ち抜かれて死ぬ梶芽衣子。この画だけ。ほらやっぱり中島だよ。だるいだるいで見ている人を適当にあしらっているくせにこんな画を見せてしまう。参るわ~。だから安心できないんだよ、中島作品は。ずっともみもみして0-0のサッカーゲームなのに最後終盤になって急にオーバーヘッドキックのシュートですよ。そこだけ。ただそこだけの一点突破こそ中島のすごさなのよ。

というわけで作品としてはダルですけど嫌いにはなれない。この瞬発力の凄まじさ。よかったら観てみてくれ(保証はしないけど)。
ろく

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