なべ

イースター・パレードのなべのレビュー・感想・評価

イースター・パレード(1948年製作の映画)
3.5
 元々はジーン・ケリーとジュディ・ガーランドのための企画。撮影が始まっていたにも関わらずジーン・ケリーが怪我。ジーン・ケリーが直々にお願いして、引退していたアステアを引っ張り出した作品。
 男性的な強引さとチャーミングな設定がまさにジーン・ケリーって感じの脚本。ドラムクレイジーなんて、ジーン・ケリーが演じたらさぞお茶目で楽しいナンバーだったろうなって思う。アステアもがんばってるけど、子供からウサギを奪うところはやっぱりちょっと引く。そういうトリッキーなセンスはジーン・ケリーに分がある。紳士はそんなことやりそうにないもんね。いや、それでもアステアはこのジーン・ケリーな世界にかなり自分を寄せにいってる。ルンペンに扮したコミカルな「二人の洒落者」なんて全身全霊で演じてるもの。このジーン・ケリーのためのがんばりが、ハンナに合わせにいくドンの役柄と重なって、アステアを尊く見せてるのな。本作をアステアのナンバーワンミュージカルと推すファンが多いのもわかる気がする。
 でもぼくは本作よりバンドワゴンの方が好きだし、なんならジンジャー・ロジャーズとのモノクロ作品の方が大好きだ。
 黄金期のMGMミュージカルって、さっさと話が進んでいくでしょ。ちょ、そこはもうちょっとじっくり描いてもいいんじゃない?って思ってる間にも人物の気持ちは変化していくんだよね。
 本作でも、ハンナがいつドンを男として意識するようになったのか、ドンがいつハンナを好きになったのかがわからなくて、え、そうなの?と、気持ちの変化についていくのが大変だった。
 こういうところ、ジーン・ケリーはうまくて、表情ひとつできっかけを表現するんだよね。「あ、いま恋に落ちた!」ってわかるの。
 でもアステアの場合、カメラが寄りすぎるとおじいちゃんだとバレちゃうからアップが少ない。だからなおさら雑に感じるんだなあ。ミュージカル映画はそういうものと割り切って観る分には、イースター・パレードは最高に楽しくて具だくさんな作品なんだけどね。
 元パートナー・ネイディーンをアン・ミラーが演じてるんだけど、彼女もまた引退してたのに引っ張り出された人。引退なんてもったいないくらいダイナミックで巧い歌と踊り。ショービス界の裏切りやマウントを取るやり口を実にいや〜なカンジで演じてて、ジュディ・ガーランドよりずっと目立ってる。いや、マジでムカつくから。とても背中を怪我してるようには見えないんだよな。アステアとの相性もバッチリで、このままコンビで何作かあってもよさそうなのにこれ一作きりなんだよね。このゴージャスさはアステアのお気に召さなかったかな。

 劇場で上映される機会は滅多にないので観に行ったんだけど、昔観た印象とほぼ変わらなかった。見慣れた作品も劇場で観ると一味違うもんだけど、以上でも以下でもないってどゆこと?
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