垂直落下式サミング

カオスの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

カオス(2000年製作の映画)
3.5
妻を誘拐された実業家のもとに、誘拐犯から身代金を要求する電話が掛かってくるが、これは妻が夫の自分への愛情を確かめたいがために、便利屋を雇って仕組んだ狂言誘拐だった。
ノリノリなファム・ファタール中谷美紀を堪能せよ。妖しげな女にかどわかされて、最初はちょっとした出来心で加担したのが、色々なものを巻き込んで、思わぬ方向に転がって行き、退くにひけなくなっていく様子に破滅的な匂いを感じる。
しかし、アクティブ人妻の中谷美紀に、魔性の女に必要な妖艶さはあまり感じられず。お転婆が抜けないまま、お金持ちのところに嫁入りしちゃった箱入りお嬢さんな感じでムカつく。だけど、実は…。何層にも裏があるオンナという怖い生き物の生態を、なかなかよく演じている。
萩原聖人の演じる便利屋の杜撰な犯行と、やたらめったら甘い見積もりにイライラさせられるが、キケンだが実入りのいい儲け話が急にふってわいたら、なんの準備もない状態でも飛びついちゃって、そこでいいように使われてしまうかも…。
褒められたもんじゃない人生をおくってきたロクでもないヤツだけれど、だからこそこの怪しい誘いに乗るしかないし、何か問題がおこってもやり通すしかないって、犯罪の片棒を担ぐ心の動きにリアリティーを乗っけるにあたって、じゅうぶん地の通ったキャラクターとして描かれていたと思う。
サスペンスとしては、あんまり食い入ってみるほどの訴求力は感じないのに、なんかみれちゃった。不思議。ストーリーとか演出については、明確に何がよかったかよくわかんない。それだけ中田秀夫監督がそつのない映画作家ってことなのかな。
実はこうでしたとタネ明かしが連続するサスペンスは、どの段階でどの情報をどのくらい観客に開示していくのかが難しい。僕個人の好みとしても、時系列が錯綜しすぎる映画は、あんまり嬉しくない。最近はアニメばっかみてて、頭が知的なモードじゃないから、小難しいミステリーとかは当分いいかなというのが本音。
最初は、大人っぽいドレスから若い女の子のような服装に着替えてきましたってんだけど、普通にガーリーな服も似合ってて、好き。好き!
雨に降られてワンピースで男の手を引く中谷美紀は、まっこと美しいのう。その笑顔プライム級。アマプラ年会費のもとがとれる。