おりょうSNK

ジャン=ポール・ベルモンドの 恐怖に襲われた街のおりょうSNKのレビュー・感想・評価

5.0
愛すべき70年代の緻密などんぶり勘定。
 
「恐怖に襲われた街」
Peur Sur La Ville(邦題とほぼ合致)
1975年 フランス
@京都みなみ会館
 
"向こう見ずの美学。
あなたはまだ、本当のベルモンドの魅力を知らない"
 
というキャッチコピーで【ジャン=ポール・ベルモンド傑作選】4作品が上映されており(京都シネマでの上映4作品と合わせて8作品って凄いな)、顔面が好みじゃないので今までの人生でベルモンド自身に興味湧いたことないから"本当のベルモンドの魅力''と言われてもピンとこなくて、たぶん「勝手にしやがれ」「ボルサリーノ」しか観てないかな?どっちかというと今こそチャールズ・ブロンソンの向こう見ずな口ひげの美学を、本当のブロンソンの魅力を知りたい/知ってほしいななんて思いつつ、「1970年代に活躍した男優ベスト30」なるまとめ記事を調べてみてもベルモンドは選外だし。
あ、ブロンソンも選外だったけど、選外という時点で選ばれてるのがブロンソン。選挙に出馬してないのに大統領に当選したり、コブラに噛まれて2時間のたうちまわった末に死んだのはコブラのほうだったというチャック・ノリスみたいなものだ。
 
なのに観に行った。
 
これが色々と面白かった!なんだこれ、ジャッキー・チェンじゃん!大トム・クルーズじゃん!ソフトなフレンチ・コネクションじゃん!
 
冒頭、連続殺人鬼からの電話が凄い。
ジャーンジャーン!ジリジリジリ!バリバリバリ!ドッギャーン!ガリガリガリガリ!といろんな音を同時に鳴り響かせて不安を煽る。固定電話って怖いもんな!
かと思ったら、最初の犠牲者は電話の音に心不全起こして窓から転落死…殺人鬼は手を血に染めることなく本懐を遂げる。しかも「リーサル・ウェポン」のオープニングに匹敵する超高層マンションからのダイブなのに、女性は噴水の浅い池に落ちて「ポチャン」って…かわいい、いや、貴様ら「ようこそ映画音響の世界」観ろやゴルァアア!!!
 
時を戻そう。
 
以前、銀行強盗犯を追走中に民間人を巻き込んでしまったベルモンド(役名忘れたのでベルモンドで通します)。良心の呵責がないとこはフレンチ・コネクションのポパイからインスパイアされたキャラなんだろうな。この犯人取り逃した過去が面白い伏線になります。
 
そんなこと折り込みながら、現在のパリで、性的モラルを欠いた女性(犯人の物差し)を狙った連続殺人が!上述したポチャン事件は始まりに過ぎなかった。
 
ヒッチコックばりの屋根の上アクションが面白い!かなり時間たっぷり使って見せてくれるから歓喜!さっと立ち上がった時に背景となるパリの街並みがめちゃくちゃ絵になってる!
お次は車で殺人鬼のKawasakiを追うぜ!カーチェイスはフレンチ・コネクションに及ばないけど、パリ市内を縦横と駆け巡る面白さがある!
そんな折、ベルモンドが執心の銀行強盗犯を見つけたと部下から電話が…!このタイミングかよ!で、殺人鬼を放置プレイしてターゲット変更するベルモンド!いいぞ、狂ってる!!
銀行強盗犯とは駅舎とホームでの追いかけっこだ!またしてもフレンチ・コネクションだ!これまた及ばないけど、きっとめんどくさいだろう撮影、よくやった!電車の屋根の上アクションも時間たっぷりだ!何度もトンネルに入りながら徐々に徐々に銀行強盗犯を追い詰めて、あろうことか乗客巻き込んで本気の銃撃戦に!!このあたりポパイより無茶苦茶かも…銀行強盗犯の最期も唐突で壮絶…
 
で、この一連のアクションシーン、スタントなしでベルモンド自らやってます。アホか70年代!凄いぞ70年代、狂い咲いてる!
 
再び連続殺人鬼との対決になるんだけど、如何わしい映画を上映してる映画館に手榴弾投げ込んだ酷いシーンを見ると、タイトルに偽りなしだと感じた。如何わしい映画は出来るだけ観に行かないようにしようと思う。
それにしてもその如何わしい映画を観に来てる観客の中に若いカップルや女性同士、はたまた老婆までいるフランスには何かと敵いませんね(笑)。
 
この後クライマックスに向かうんですが誰も読んでないからもういいか!
 
音楽がモリコーネ!語れるほど詳しくないので簡単に。
口笛がマカロニウエスタンで、繰り返し流れるベース音は「遊星からの物体X」でした!
 
とにかく必死で決死で、ダレる部分もあるけれど、緻密などんぶり勘定的な映画でマジ最高でした。そんなのがたくさん生まれた70年代ってやっぱり最高!
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