Ark

シャッター アイランドのArkのレビュー・感想・評価

シャッター アイランド(2009年製作の映画)
5.0
大どんでん返し!(長文)
文句なしの星5。
連邦保安官のテディはシャッターアイランドの施設から逃げた女を捜索するため、相棒と共にこの島に来た。捜査を進めるうちに違和感に気付きはじめる。


ネタバレあり








観客も途中から“違和感”を抱くはず。なぜなら途中から現実と妄想が入り混じり始めるから。結論としては、テディは過去に妻に子ども3人を湖で殺されてしまい、その妻を殺した。その真実に耐えられなくなったテディは、自己防衛のため妄想世界に自分を閉じこめた。テディは保安官だった頃、毎日仕事に明け暮れて妻と子どもをまともに相手にしてなかったため、妻が壊れたのはテディにも責任があるのだ。きっとテディはそれを分かっていたので、余計に辛くて耐えられなかったのだと思う。そうしてテディは施設に入れられたが、一向に良くならないので、医者は全員でテディの妄想に合わせてロールプレイすることで、症状が好転することを期待していた。
最後にテディはこう言う。
「ここにいると考える。どっちがいいかなって。モンスターとして生きるか、善人として死ぬか…」
これは、妄想の世界の住人のまま生きるか、ロボトミー手術を受けるか、という意味。テディは最終的に正気を取り戻したが、今度は妄想世界の中で生きていたときは忘れられていた凄惨な“真実”を思い出してしまったため、これに耐えられないテディは自らまだ治っていないフリをしてロボトミー手術を受けることにした。しかしロボトミー手術を受ければ、元の人格はなくなり別人になる。自分であって自分ではない誰か。そのためテディは「モンスター」に例えたのだ。
このラストには2つの見解がある。「テディは正気に戻らなかった」「自らロボトミーを受けた」私は後者と捉えたため、上記の見解となった。

以下さらにネタバレ
妄想の合図は“火”。その時は気づかなかったけど、あとでよく見ると、妄想シーンが始まるとき毎回テディの近くに“火”がある。マッチの火、暖炉、火事、タバコ……。テディは湖で我が子を3人全員亡くした経験から、“水”がトラウマなのだ。その反対の“火”が妄想のトリガーとなっている。
細かいと思ったのが、冒頭のシーン。シャッターアイランドに向かう最中、船酔いで吐きまくっているシーンでのセリフ。
「大丈夫、ただの水だ」
初見時、どういう意味か分からなかったけど、全部観たあともう一度観ると水がトラウマだからだと分かる。ただの船酔いではなかった。
それと、気づかなかったが最初からあった額の絆創膏。これは以前もテディが妄想でジョージ・ノイスのもとを訪ねた時に殴られてできた傷。(本編で顔が傷だらけのジョージに「誰にやられた?」と訊くテディに「あんただ」と答えたことから)
他にもよく見ると気づくことが山盛りある。ネタバレなんかを見るのもおもしろい。
奇妙だと思ったのは、唯一わからなかったのは、テディが聴取している最中の女が、水が欲しいと言うので相棒が持ってきたところ、飲む時にさっきまであったコップが消えていたこと。飲む時に、まるでそこに水の入ったコップがあるような動作をする女の手元にはコップがなかった。どういうことかこれだけはよく分からない。
全体を通してとてもよく作り込まれていて、おもしろかった。

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