メッチ

シャッター アイランドのメッチのレビュー・感想・評価

シャッター アイランド(2009年製作の映画)
4.0
「心の傷(トラウマ)」を持っていれば、それを守るために怪物と化してしまう悲しき怪物。

この作品は、正義のために生きる悲しきモンスターを描いた物語。そして私には、そんな主人公の描かれ方にマーティン・スコセッシ監督っぽさを感じました。

なぜかといいますと、本作の主人公がマーティン・スコセッシ監督の過去作の『キングオブコメディ』の主人公に近いものがあったのではないかと思ったからです。
あの作品の主人公は、虚言癖みたいな一面が目立っていましたが、自分の夢は絶対に叶えようとする一面もあったような気がして、二面性みたいなものがあったように見受けられます。

その二面性が、本作の主人公にもあったように感じます。正義感の故に「こうだ!」と思ったら突き進むような一面に対して、正義のためなら何でも突き進んでしまうようにみえる一面があったかと思います。

作中違和感のある描写が多々あるかと思います。ちょっとしたシーンで、断片的にみえるような描き方というばいいのでしょうか?そのまま流れるのが普通なのに、一瞬ではありますが登場人物の行動が飛んでいるようにみえる。
例えば、右手で持っていたコップが次のシーンでは左手で持っていたりしています。もちろん、この他にもいくつかあります。

このように、主人公の視点だから主人公にとって大事な記憶は、そのまま我々にみえるように反映されていて、そうでないものは飛ばされる。それはまるで、自分の都合のいいものは記憶に残り、都合の悪いものは排除される。
そう考えると物語の序盤から既に、主人公の視点だけしかみれないようになってしまって、物事を俯瞰してみれないようになっていたように思えます。

なので、主人公に同情したいけれども、そんな主人公に嘘をつかれているような錯覚に陥り、素直に同情できない。2つの気持ちが道立してしまう不思議な作品でした。
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