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学生社長のandesのレビュー・感想・評価

学生社長(1953年製作の映画)
4.0
川島雄三の初期作品かと思いきや、キャリアとしては中盤くらい。冒頭の観光地と被さる英語のセリフが非常にメタ的でニヤリとさせられる。
喜劇タッチで進んでいくが、徐々にかなりややこしい相関図になり、どう転がるのかわからないスリリングな展開となる。それでいて、混乱しないのは川島雄三の卓越した手腕による。
さて、実質主人公といえるのは、ジャンヌ・ダークのお松ちゃんで、気風がいいヒロインを好演。大学の講義に潜り込み
井原西鶴に反論(?)するシークエンスは素晴らしく、後の「女泣き」につながる展開は見事。鶴田浩二も飄々と学生社長を好演しており、やや粗めなストーリーをカバーしている。
ラストの川島節はわかっちゃいるけど、泣ける。スリ家業という業を清算するには、去るしかない(そして最後にメダルを返すのだ)。「サヨナラだけが人生だ」という美学がガツンと伝わる。荒唐無稽な話だが、天才監督の手腕を堪能できる一作である。
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