リーアム兄さん

ブラス!のリーアム兄さんのネタバレレビュー・内容・結末

ブラス!(1996年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

【好きなセリフ】
グロリア「私の性分よ。お節介。」

イギリスの炭鉱町グリムリー。炭鉱を中心としたこの町では「グリムリー・コリアリー・バンド」という炭鉱夫が中心のバンドがあり、全英ブラスバンド選手権に出場するべく活動していた。しかし、イギリスの事業民営化等の影響により、炭鉱が閉鎖される事態に追い込まれてしまう。経営側と労働組合の話し合いが度々行われ、炭鉱の継続もしくは多額の退職金という二択を炭鉱夫は迫られる。この町の炭鉱夫であり、バンドにも所属しているアンディ(ユアン・マクレガー)は炭鉱の継続を望んだが、多数決の結果、炭鉱は閉鎖されることとなる。バンドメンバーも職を失うことになり、ブラスバンド選手権への出場意欲も無くしてしまう。バンドのリーダーであるダニー(ピート・ポスルスウェイト)はそんな中でも由緒ある「グリムリー・コリアリー・バンド」の名を汚さぬよう、練習に励もうとするが、メンバーのモチベーションとの乖離が広がってしまう。そんな中、この町で育ち、アンディの幼なじみであるグロリア(タラ・フィッツジェラルド)が現れる。彼女を新たなバンドメンバーに迎え、バンドは最後の演奏を迎える。

実際にイギリス南ヨークシャーにある炭鉱町グライムソープで起こった出来事をモデルにした物語。
「シングシング」のようなブラスバンドを中心にしたストーリーかと思って見ていたが、時代に左右される炭鉱夫たちの生活、人間ドラマを描いた社会的メッセージもある映画であった。
1990年代のサッチャー政権による経済政策とその反動をブラスバンドという「音楽」を中心に描きながらも、同時に炭鉱夫であるバンドメンバー一人一人の生活を描くことにより、当時の人々の葛藤を生きる(働く意志)=音楽と閉鎖していく炭鉱いう関係で巧みに表現している。

もちろん、作中では「ダニー・ボーイ」や「ウィリアム・テル序曲」、「威風堂々」と言った楽曲がブラスバンドにより演奏され、一種のミュージカルのような楽しさも兼ね揃えている。
所々で登場人物がブラスバンドでしか使用されない「ユーフォニアム」という楽器名を主張するシーンがあり、この映画にとっても炭鉱夫にとってもブラスバンド・音楽というのが必要な要素となっていることがわかる。

若き日のユアン・マクレガーとタラ・フィッツジェラルドによる初々しい恋模様も必見。

エンディングが「威風堂々」で終わるのも、一時代を築いた炭鉱夫たちの堂々とした一生を締めくくるような描かれ方ですごく感動した。