櫻イミト

暗黒街の弾痕の櫻イミトのレビュー・感想・評価

暗黒街の弾痕(1937年製作の映画)
3.5
ボニー&クライド(1934年死亡)に着想を得た最初の映画。フリッツ・ラング監督のハリウッド2作目。フィルム・ノワールの古典とされる社会派ラブストーリー。原題は「You Only Live Once(人生は一度だけ)」※邦題は変だと思う

公選弁護士事務所で助手をするジョー(シルヴィア・シドニー)は保釈された前科三犯のエディ(ヘンリー・フォンダ)と式を挙げる。真面目で幸せな生活を夢見る二人だったが、前科者の烙印が付いて回り行く手を阻む。そんな折、銀行強盗の容疑がエディにかけられる。。。

池の葉にとまる一組のカエルに自分たちを重ねるジョーとエディ。二人の望むささやかな幸せが、前科者というレッテルにより破滅へと追い込まれていく。愛の純度と比例して、冤罪と死刑制度への疑問が強められていく。ナチス支配から間一髪で亡命したユダヤ人のラング監督。権力に感じた理不尽や危機感が反映された本作の筆致は厳しさに満ちている。

映像面では、刑務所での光と影の使い方や小物の美術、「扉は開かれているんだ」との声が重なる森の闇にドイツ表現主義の名残を感じた。鑑賞したDVDの画質がイマイチだったので、レストアされたブルーレイ版ならばさらに堪能できると思う。

若かりしフォンダも新鮮だったが、シルヴィア・シドニーの慈愛に満ちた表情が印象深かった。赤ちゃんに名前を付けず「ベイビー」と呼んでいたのが重要ポイントだと思うのだが解釈しきれていない。我が子よりも夫への愛が大きかったと単純に受け取って良いものだろうか?
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