義民伝兵衛と蝉時雨

東への道の義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

東への道(1920年製作の映画)
4.4
活弁付上映にて初鑑賞。活弁士は澤登一門の片岡一郎さん。感情表現豊かな活弁によって、見事に物語の中に彷徨い込む。
天性の映画監督D.W.グリフィス監督によるメロドラマの傑作。
リリアン・ギッシュ演じるヒロインの悲劇が感傷的に心に迫りつつも、所々に散りばめられたユーモアに笑わされる。
映画としてのその純粋な面白さに息を呑む。
「國民の創生」同様、恐るべき完成度の高さ。
リリアン・ギッシュが死と隣り合わせの名演技を繰り広げる驚愕の流氷上のクライマックスにもその完璧主義がありありと立ち現れる。
初めてグリフィス作品(「國民の創生」)を観た時は、映画としてのその完成度の高さや映画監督としてのその才能とは裏腹に、根底にびっしりとこびり付いている白人至上主義思想の汚臭には鼻を摘まずにはいられなかった。しかし本作を観てグリフィス監督の思想はともかく、映画ディレクターとしての天性の才能はやはり無視することが出来ないと感じた。映画創世記の大巨匠の才覚に改めて圧倒された。