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月の砂漠のharunomaのレビュー・感想・評価

月の砂漠(2001年製作の映画)
5.0
あまりにも俐発すぎた映画批評=映画監督。
青山真治の怜悧さは、あらゆることに応答するという意味でも、それは器用すぎるとも言えるし、反転、多種多様な応答はその度合いを持って少なからず不器用であった。ドキュメンタリー、アメリカ映画、プログラム・ピクチャー、世界映画、日本映画、あるいは小品の自主映画。その活動の多様性を、たとえば彼の全作品を見れば一貫したシネマのフォルムを認識できるが、いくつかしか見ない者にとっては、通り一遍の映画作家としての、評価すら、まだらに定まらないのだろう。彼は、独自の世界観を構築して悦に入る映画作家、ではない。映画監督であった。映画監督は映画史を生きる者だ。映画批評家もまた。彼は、映画も批評も小説も音楽も書ける。そのすべてをやることが、監督だったのかも知れぬが、ある時期を境にカメラマンに、あるいは映画スタッフに的確な指示出しをし始めた相米慎二のことを思うと、そのスタジオ=システムの瓦解の中で、ありうべきジェネラルな身振りは当然ではあったが、果たしてそれは、溝口的な映画監督の仕事だったのだろうか。その環境がない、その環境を作る怜悧さは、しかし、映画史においてその善なる前身が奇形とも言えるたむらまさきのショットと共に、青山真治の映画ははじまり、今に至る。撮影だけではなくソニマージュ(Sonimage)のスタッフも言わずもがな。愛の誕生はまたはじまる。

黒沢清は一言コメントを出すしかない。
いまなら「青山真治を国葬に!」

文章は軽快で明晰で見晴らしが良く、このままどこまでも共に旅ができるのではと思っていました。
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