ちぇるごまる

十五才 学校IVのちぇるごまるのレビュー・感想・評価

十五才 学校IV(2000年製作の映画)
3.8
予備知識なしでの鑑賞。
山田洋次監督作品。
学校シリーズ4。

これまでの学校シリーズとは異なり、主人公は不登校中学生。
彼は教師や父親をはじめ大人が口にする「みんなと同じようにし、調和することが大事」と言いながら「個性的であれ」と言う矛盾に疑問と不満を抱き、登校時に腹痛を覚え欠席を繰り返す日々。
やがて、両親に内緒で彼は「冒険しに行く」と書き置きを残し、リュック1つで旅に出る。
数回のヒッチハイクをして、東京から向かう先は、屋久島。
樹齢7000年の縄文杉に何を求めたのか。
自分でもよく分からない。
分かったことと言えば、この旅で知り合った人たちやその家族との関わりから見えてくる"思いやりの本質"なのだろう。
旅から帰宅し、彼は一回り大人になり躊躇いながらも気持ちも新たに登校し学校生活という新たな旅に出る。

主人公の年頃の男女は、大抵において複雑な心境で生きている。
本当の自分は?
自分の存在理由は?
自分が求めるものは?
それらを知ることは生きる上で大事なこと。
人生は限られた環境だけでは得られない学びの方が圧倒的に多い。
説教めいた話をするトラックの運転手、家族思いの関西人の運転手、大型トラックを運転し生活費を稼ぐ自閉症の息子を持つ中年女性、共に縄文杉を目指し山道を歩いてくれ「一人前」を教えてくれた年上の女性、介護が必要な頑固だが人情味溢れ1人暮らしをする老人…
勇気を出して、知らない人たちと交流をし様々な経験の中で、何を思いどう判断し行動するかということこそ生きる上で大切な勉強なのだろう。
ただ、主人公が全く事件や事故に巻き込まれなかったことは、本当にラッキーと言わざるを得ない。
現代において皆んなが皆んな善人とは限らないので、現実的にはもう少し警戒心が必要と考えてしまうが、ま、そこはフィクションということで。
地味ながらも、思春期の少年の苦悩と成長を描いた清々しい良作。
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