人生ベスト級。展開はずっと荒唐無稽としか言いようがないし、デジャヴ(既視感)なのに17世紀と現代が交錯していく大傑作。
姿を反射するシンメトリー装置であった「鏡」が徐々に虚像を引き寄せ、その共通項ともいうべきガラスに囲まれた列車は男を別世界へ運んでいく。対向車線を高速で過ぎ去っていく列車の窓枠はコマとなり、間に焼き付けられたような女性のイメージ(幻)が浮かび上がるショットに鳥肌。史上最強のファム・ファタール。
最後には鏡自体が消失し、その延長線としての切り返し(視線)で提示される仮面舞踏会は映画以上の何かを宿しているとしか思えなかった。
レナード・ベルタはキャメラをほぼ固定せずティルトやズームを無数に行っており、意識しないと気付かないが確実に構図へ「動」を導入し続けている。