このレビューはネタバレを含みます
どうしてこれでキレないでいられるのだろう?と思った。イタリア人にとって子供に対して大人がキレるなんて普通あり得ないのか?と野蛮な自分を深く恥じてしまった。キレそうになるのを必死で堪えているという風でもない。キレない代わりに泣いてしまうキムロッシさんが何とも言えず可愛いかった。(トムハンクスがこの役をやったら絶対怒鳴ってる。)
子供にキレるなんて理不尽以外の何ものでもない、そんなことが出来るなんて人間じゃない、どうしてそんなヒドいことが出来るんだ、ペルケ?というイタリア人の子育て常識を見た気がした。もちろん、イタリアにも子供に対してキレる親はいるだろうが、そういう親に対する社会の目は日本よりずっと厳しいのではないかと想像する。おそらくちょっと怒鳴っただけで虐待認定されるのではないかと。あくまでも想像だけど。
(単にジャンニ個人の性格のせいかもしれない、とか、子供に負い目があるのかもしれないというのはこの際おいておく。)
パオロを演じているアンドレアロッシ君は身体障害者。イタリアだからこそ作れた映画では。この難しい父親役を、イケメンキムロッシさん、よく引き受けてやったと思う。ジャンニがパオロを大事そうに愛撫する場面、もうこれを愛と呼ばずして何を愛と呼ぶ?というくらい愛だった。聖父子像か。でも、美しいだけでは話は終わらない。
イタリア映画の例に習い、話がどう進んでいくのか全く予想がつかず、セリフもそう来るか!と驚くものばかり。特にパオロのセリフには驚かされ、笑わされた。原作の著者の実体験に基づく話だけに重いけれど、救いもある。でもそれは決して映画的虚構的な救いではなく、一方でシャーロットランプリングに心の奥底の声を吐露させた上で描かれる、本当に救いなのかどうかわからないくらいの頼りない光…。リアリズモだなーと思う。
"彼らが内なる闇に迷った時、私たちは帰るのを待つしかない。"
"そばにいたいなら苦しむ覚悟が必要。""…妬ましいと思う自分を恥じはしない。" そして…。
シャーロットランプリングさん、久しぶりにお見かけしたが、このお年にして登場場面ではハッと息を呑むお美しさ。でもそれだけではない、どこかホラーっぽい怖さがある女優さんだ。
イタリア人、ロシア🇷🇺だけではなくノルウェー🇳🇴も好きらしい。それにしてもノルウェーは薄暗かった。