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パプリカのmasaakiのレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
4.5
2022 09 02

これねぇ、なんで今まで観てなかったんだろうとちょっと後悔。『インセプション』は映像表現のインスピレーションを受けてるくらいかとずっと思ってたけど、設定ほとんど借りてるじゃん…

難解なのは置いておいて、観たあとの印象が近いのは『マトリックス』。科学やコンピューターの発達によって侵される精神領域の哲学的問いにどう向き合うか。『パプリカ』は世界観の設定やテーマを口頭で説明してくれるのでむしろボーッと観れないが(「現実と夢」、「現実とインターネット」、「生と死」、「男と女」と、二項対立についての作品ですよ〜と教えてくれたり)。

現実と夢が大規模に入り交じって、人々が「夢に生きる」カオス状態になる終盤、サラリーマンたちが踊り出して金と利権の亡者になっていく様子が描かれるが、これは経済が低迷し始めるもまだ足掻こうとする1993年(原作の出版年)の日本社会の風刺?わからない、当時の社会を勉強しなければ。

わざわざ「イマジナリーライン」や「パンフォーカス」という単語を出すほどだから「映画についての映画(アニメ)」だと思って観ていたら、ただの粉川を感情的にも行動的にも流動させるマクガフィンにすぎなかった気が。「現実と虚構(映画)」という二項対立は作用していたけど。だからこそ劇場スクリーンを突き破ってパプリカを助けに行くシーンが成り立つわけで。

この作品を悪い意味で難解にしているのは、設定というより人間描写の甘さだと思う。理事長の動機は一理あれど、いろいろと端折ってる感が否めない。2時間フルで使って緩急つけながら進めたらもっと膨らみのある作品になるんじゃないかなと思ったり。
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