Ricola

パプリカのRicolaのレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
3.7
我々が寝ているときに見る夢の世界は実に不思議である。自分の好きなように夢を見れたらどんなに楽しいだろうと思うこともある。夢を操作できたなら?他人が見る夢に入り込めたなら?夢が現実に侵食してきたなら…?そんな好奇心と希望を叶えることの危険性を考えさせられる。

他人と夢を共有できる装置を悪用され、暴走する悪夢と戦うというストーリーだが、縦横無尽に夢のなかを駆け回るキャラクターや不気味だがイキイキとした夢の世界に魅了されるばかりだった。


夢の女性パプリカは、物怖じせずに立ち向かって自由自在に動き回る。「現実」を生きる粉川や千葉は、夢の中で巻き起こるすべてに違和感を覚える。
キャラクターが自在に飛び回って平面から立体に、立体から平面に変化する自由さ。背景に溶け込み、形状までもそれに適応する。床が底なし沼のように沈んでどんどん落ちていったり、現実なら不可能なところを打ち破って中に潜り込むことができるのだ。

蝶というモチーフがこの作品の主題のようである。
青い蝶々が急に羽ばたいていったり、パプリカが蝶に変身したり。
「胡蝶の夢」のように、自分が今見ていると思っている夢は本当に夢だという確証はあるのか、現実だと思っていてももしかしたら本当は夢かもしれないという疑念を抱かざるをえないような世界が、特にこの作品の「夢」のなかで広がっている。
蝶のように美しく身軽に飛んでどこまでも行けるといったイメージのみならず、そういった点も言えるのではないだろうか。

現実を生きる人物が現実と夢の境目がわからなくなるのではなく、人物の目の前に立ちはだかる夢が現実を侵食していく。ただそれは結局、人物の抱える心の問題に関わるものであり、二重の意味での「夢」と向き合うことだったのだ。
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