「芸術は、ここちよくあってはならない」
(岡本太郎 『今日の芸術』より)
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マイ殿堂入り映画の一角を担う傑作アニメーション。
今敏の「エキセントリック」最終形態が本作だ。
ストーリー、世界観、音楽、セリフ回し。どこをとってもぶっ飛んでいる。
彼は本作公開の4年後に46歳で死んでしまった。
確かに本作は、好き嫌いがはっきり分かれると思う。
本作を見て、“普通”という感想はあまりないだろう。美術館に飾ってあったら立ち止まるタイプの絵だ。
しかし、岡本太郎が言っているように、芸術とはここちよくあってはならない。
優れた映画監督は、はげしい意思と決意をもって作品を作り、新しいものを創造する。そういう作品を鑑賞する場合は、やはりこちらにも覚悟と緊張感が要求されるのだ。
芸術家は、我々よりずっと先の方を走っている。それに追いつけない場合、確かに気持ち悪いし苦痛だろう。しかしそれでも全力でぶつかることにより、新しい何かが自分の中で生まれることもある。
見慣れた作品ばかり見て、気持ちよくなっているだけでは、審美眼は成長しない。
「芸術は、ここちよくあってはならない」とはそういう意味だと思う。
本作は紛れもなく、唯一無二の芸術映画。
「エキセントリック」ここに極まれり。
ぶつかってみて損はない。
おのれの感受性を試してみよう。
苦悩することもまた、趣なり。
公開:2006年
監督:今敏(『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』)
原作:筒井康隆(『時をかける少女』)
音楽:平沢進
出演:林原めぐみ、古谷徹
個人メモ:⭐︎4.5→マイ殿堂入り映画