くまちゃん

ロッキー4/炎の友情のくまちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

ロッキー4/炎の友情(1985年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

ロッキーシリーズの中で盟友アポロの死という大きな転換期にありながら、ドラマ性が減り、スポ根要素が増える一方で政治的な色が非常に濃い。よって全体的に歪さが際立っている。

ポーリーの愛人、しゃべるドラム缶夫人や、イワン・ドラゴの無機質で機械的な雰囲気など、メカニカルな部分が強いのは、どうしても84年公開の「ターミネーター」の存在を無視できない。
なぜ「ロッキー」にロボが?当時の映画ファンも疑問に思ったことだろう。現代の映画ファンも全く同じことを思っている。

ソ連サイドは現役チャンピオンであるロッキーとの試合を求めていたはずだが、
どういう経緯でアポロになったのかが不明瞭。

ドラゴ戦でアポロが亡くなったのはロッキーにも大きな責任がある。
アポロとの友情、ファイターとしてのアポロを尊重したが故にタオルが間に合わなかった。
それ以前にエイドリアンの言う通り真剣に説得を試みる事も出来ただろう。
アポロの性格上試合に挑む確率は高いが、ロッキーがアポロの身を案じてストップをかける過程が大切なのだ。
友の死。その責任の所在に言及する場面があっても良かったのではないだろうか。
ロッキーが自責にかられ、アポロの妻が気丈にも優しい言葉をかけるような。

アポロはプライドが高く、世間に忘れ去られる事を極端に恐れる。
ロッキーとの試合のビデオを楽しそうに鑑賞するアポロ。彼は過去の栄光の呪縛に囚われている。自身の破滅をもたらすとも知らずに…

試合中に選手が死亡するのは誰が見てもショックを受けるだろう。
自身の大切な人がボクサーなら尚更だ。
エイドリアンの気持ちはいつも蔑ろにされる。リングに上がることが男の証明でありアポロの弔いになると信じてやまない古い価値観のロッキー。
あなたは勝てないとハッキリ伝えるエイドリアンの気持ちはさぞ辛かったことだろう。
ロッキーには戦ってほしくない、傷ついてほしくないと思いながらも、リング上で煌めいているロッキーが好きなのだ。
ロッキーを否定するような発言は、ここで傷つけてでも止まってほしいと願う切実なる彼女の想いだ。

ブリジット・ニールセンは長身のため、スタローンよりドルフ・ラングレンのほうが似合う。

なぜ全米ボクシング協会がロッキーとドラゴのマッチングに否定的なのか、なぜソ連へ渡らなければならないのか、その理由があまり語られていない。
そしてなぜポーリーはついてきたのか?
そしてなぜついてきて文句ばかり言うのか?🤔

トレーニングシークエンスのロッキーとドラゴの対比は前作と同様。
髭面で肉体を刺激するロッキーはもはや誰レベル。髭は剃れ!

引退して5年のブランクがあるとは言え、仮にチャンピオンだったアポロをあそこまで徹底的に打ちのめしたドラゴにロッキーが勝てる道理はない。
圧倒的なパワーとリーチによってロッキーより有利なのは明白だ。
それでもドラゴを追い詰めるロッキーに説得力があるのは彫刻のように削がれた筋肉のおかげだろう。
明らかに前作よりも仕上がっている。
竜虎相搏と言える試合のわりに見応えに欠けるのは単調な拳の応酬とボクシングに不慣れな空手家ドルフ・ラングレンのぎこちなさが原因だ。

ラストのロッキーの演説はチャップリンの「独裁者」を彷彿とさせるが、ソ連高官の拍手や拒絶から声援へ変化する観客など、米国至上主義とも取れる「世界平和のためにはあなた方が変わりなさい」と上から目線な浅いメッセージがうかがえ、チャップリンとは似て非なるものだった。
ロッキーの一作目と比較すると品がなくなってきてるのが残念。
くまちゃん

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