くわまんG

ロッキー4/炎の友情のくわまんGのレビュー・感想・評価

ロッキー4/炎の友情(1985年製作の映画)
3.0
あらすじ:俺たちはボクサーだ。死ぬまで闘う生き物だ。後はどうなってもいい。なぁアポロ…そうだろ?

日本人が大好きな“仇討ち”という外形のおかげで大人気な4作目ですが、個人的にはロッキーの魅力半減な一本。

ロッキーのコンセプトは、「下町出身のゴロツキでも、夢を持って邁進し、どんな苦境が訪れようとも決して諦めなければ、必ず幸せを掴める。」です。この内、どの要素が欠けてもダメです。観客が「(何者でもない)自分もロッキーのようにがんばろう」と思えなくなるからです。

ところが今回のロッキー、下町感が皆無で親近感が湧きません。その上さしたる苦境は訪れないし(アポロの死に対する葛藤も弱過ぎ)、トレーニングはぬるいし、ハッピーエンドもご都合が過ぎて興ざめ…といった具合。

なぜご都合かと言うと、まず「男は(家庭を)振り返らずに、(変化を拒絶して)一心不乱に(仕事に)邁進すべし」というアポロの生き方が、手放しで称賛できないから。また、(ソ連のお偉いさんは非道だったけど)ドラゴが根っからの悪党じゃないから。

例えば、ドラゴが試合前に毒盛ってたとかなら、全面的にアポロを擁護できました。でも彼は、正々堂々と試合でアポロを負かしています。殺意はあったかもしれませんが、ルールは破っていません。なので、アポロが死んだのは「ドラゴが殺したから」ではなく、「アポロが弱かったから」という印象になります。

熱っぽいだけでスカスカな主題歌を背に、ドライブやトレーニングに勤しむスタローンらしいシークエンスも、(悪くはないのですが)自己陶酔の激しい天狗にしか見えず、『ロッキー』との相性が悪いです(もしかすると当時スタローンが浮わついていたのかも…)。

おまけに、エイドリアンが『3』での良妻っぷりはどこへやらの体たらく。寂しいからというだけで、息子をほったらかしてロシアまでやって来るバカ母です。親子関係崩壊不可避なのですが、一筋のヒビも入りません(今回は)。

とはいえ、4作目にして全く無理が祟ってないシナリオはお見事ですし(それだけに勿体ない)、「想いは国境を越えて伝わる」というメッセージは、かなり稚拙ながら社会情勢を反映していたりもします。

何より、極真空手界の雄ドルフ・ラングレンを、ハリウッドへ引き込んだ点で重要作ですね(ドラゴのストレートはほぼ正拳突きなのだ…!笑)。公私混同キャスティングのブリジット・ニールセンもハマり役でした。

個人的に一番のお気に入りシーンは、ポーリーが初めてロッキーに礼を言うところ。スタローンと共に変わりゆく『ロッキー』シリーズにあって、微塵しか成長しないポーリー。この後も生涯ろくでなしですが、生涯親友のそばを離れない、独特の人情味がある人物です。彼目線でシリーズを追うと、なかなか趣深いですね。