半兵衛

あこがれの半兵衛のレビュー・感想・評価

あこがれ(1966年製作の映画)
3.5
身分の違う男女が様々な障害を乗り越えて愛を貫くというベタな青春映画なのに、凡庸な内容にならず芳醇な作風に仕上がっているのは山田太一の脚本による功績か。そして山田作品特有の「台詞にその人間の匂いが立ち込める」という特徴は健在で、それが養護施設育ちの主役二人だけでなく彼らを見守る大人たちのキャラクターを魅力的に仕立てドラマに厚みをもたらす。恩地日出夫監督も余計なことをせず脚本をオーソドックスに映像化している印象で、それが素朴だけど愛らしい味わいを引き立たせる。

アイドル映画とは思えないほど陰のある内藤洋子(だからこそ笑顔が引き立つ)や彼女たちにある忠告をするもそれがエゴではないかと苦悩する新珠三千代、田村亮を実の子のように見守る加東大介と賀原夏子と役者はいずれも好演しているけれど、MVPは完璧に荒れた子供を演じた林寛子と飲んだくれで娘である内藤洋子から金をせびる最低の父親ながら最後の対応で魅せてくれる小沢昭一。

余計な台詞を付け加えず空気だけで二人の結末を示すラストも善きかな。
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