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対馬丸-さよなら沖縄-のmitakosamaのレビュー・感想・評価

対馬丸-さよなら沖縄-(1982年製作の映画)
3.5
これ亜細亜堂の制作だったのか!キャラクターデザインが新ど根性ガルの小林治のタッチそのまんまだから東京ムービー制作かと勘違いしてた。

太平洋戦争時の沖縄で起きた対馬丸事件を元にした物語。知らなかったのだが、沖縄から本土に学童を含め住民を疎開させるため対馬丸なる民間の貨物線での輸送をし、米軍の潜水艦による攻撃で1500名もの犠牲者が出たとのこと。
戦争をテーマにしたアニメ映画は多々あるが、今作が最も救いが無いのではと思われる。
やはり沖縄という戦争の被害が甚大だった地域を扱っていることが大きい、ゆえに戦争の悲惨さ、無益さがトコトンまで描かれている。
でも絵柄が素朴で可愛らしいんだよね。このギャップも感情を揺さぶる。

軍部の全体主義により疎開の正しさが主張され、教員らも“お国の為”に子供らの疎開を猛烈に後押しする。
あくまで市民の避難が目的じゃなく、軍事教育が主目的。中央から離れた地方の軍部や政治家が、いかに盲目的で冷静な判断が出来ないかを良く表現している。

粗悪な輸送船での船上生活の平穏さと、平和の均衡を崩す米軍の攻撃によるの轟沈。熾烈極まる表現で、人の死の描写が重い!極限状態でのサバイバル戦。筏で漂流する過酷さ。

無事に生き残っても軍部から箝口令が敷かれ、しかも沖縄に戻れば沖縄本土決戦という更なる地獄が待っている。
これは…救いがない…本当に沖縄の方々は戦中にご苦労されたのだと思い知らされる。
未だDVD化されていないようだが、こういう作品こそ後世に残すべき。
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