たく

裸のキッスのたくのレビュー・感想・評価

裸のキッス(1964年製作の映画)
3.8
これはジーンと来た。
さんざん男を食ってきた売春婦が人生をやり直そうと奮闘する話で、冒頭の坊主頭にカツラを付けた女が男をタコ殴りにするアバンタイトルが強烈過ぎ。前衛映画なのかと一瞬思っちゃったけど、いったいどういう訳でこうなったかは終盤明らかになる。サミュエル・フラー監督は「最前線物語」しか観てなくて、何よりゴダールの「気狂いピエロ」の本人役での出演が強い印象。

ケリーが新天地でまず最初に町で人気者の警部のグリフをつかまえるあたりにしたたかさを感じさせる。これが悪い女かと思いきや、彼を最後の客として障害者児童施設で心機一転、看護師として働き始めるところにケリーの澄んだ心が垣間見える。彼女が同僚を救おうと男気を見せたり、幸せを掴みそうになってからの展開がちょっと「プロミシング・ヤング・ウーマン」を思わせて、人は見かけによらないっていうのが怖い。このくだりの説明が省略されてるのはちょっと分かりづらかった。一見おしゃれっぽい題名の意味が分かるところはおぞましかったね。
グリフが最初から売春婦を見下しててケリーを悪女と決めつけたような言動をするのが胸糞悪いんだけど、最終的にはいい奴でグッとくる。

人物の正面からのアップを多用するのが印象的で、後半でミュージカルみたくなるシーンも唐突で驚く。ここでのケリーの歌唱が抜群に上手かったね。
たく

たく