デニロ

裸のキッスのデニロのレビュー・感想・評価

裸のキッス(1964年製作の映画)
3.0
昨夏、渋谷の映画館でフィルムノワールの特集をやっていた。何本か観たい作品があって出掛けていた。置いてあったチラシに、本作が多くの監督に影響を与えてきた冒頭シーン、と紹介されていた。その一行にこころがザワついて観てしまった。

その冒頭とは、娼婦がヒモをハンドバッグでぼこぼこにした挙句、騙された分だけの金を奪い取る。その時何故か娼婦のウイッグが取れ、丸坊主。悠然と化粧直しをして立ち去る娼婦。このシーンは誰に影響を与えたんだろう、と思ってしまう。情熱的ではあるが今となってはかなりユルい。

汚職警察官、小児性愛者とその被害者、売春等々、今も昔も変わらぬヒエラルキーを病院棟で象徴的に描きながら描いている。絵柄は当時の低予算アメリカ映画の安っぽさに満ちているが、描こうとしていることは普遍的な希望と、そんなことはという諦め。いや、やはり映画のテーマとして持ってきていることに製作者たちの強い思いを受け取る。

いまの日本での日常的なニュースでもあるが、わたしたちはそんなこともあるのだと風景を見ているように次々と忘れていく。
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