ドナウ

死の棘のドナウのネタバレレビュー・内容・結末

死の棘(1990年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「新しい過去をたくさんつくろう」

始まった瞬間から言い合う夫婦と襖にぶちまけられたインクのシミに不安がよぎり、小津安二郎を彷彿とさせる神経質なまでに拘った小道具と人の配置、無機質で感情を削ぎ落としたような演技や音楽が緊張感を演出する。ある種の反戦映画のようで、妻ミホは時に温厚な日本人、時にヒステリックに服従させようとする日本軍人のように描かれ、夫は徐々に洗脳されていく元日本兵、愛人邦子はお前のせいでこうなったとトシオに言い放つ。口調が変わり狂気に支配されたミホと、無感情なトシオの発狂する様の恐ろしく不気味な事…客観的で夫婦共に人間味が無い分こわれゆく女よりもさらに恐怖を感じた。緊張、不安、恐怖の漲る中、薄っすらと光指すように希望が見えた瞬間に緊張の糸は切れユーモアが現れる。折に触れて現れる沖縄では美しい自然と戦闘機乗りの敬礼、森の道を進むノロ?と子供に何かを語る老人、子供が軍歌を歌い、銃を手に取り敵を迎え撃つ…老人が子供達に語って聞かせていたのは神々の深き欲望にもあったけど、これは小栗監督なりの重喜劇だったのか。
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