お話はいつもの大映アダルトドラマなんだけれど、主人公の野心家キャラをこういう役をよく演じていた田宮二郎ではなく成田三樹夫にやらせているのが珍しい。そのためかいつもより派手さはないがよりクールな作風に仕上がっている。
そしてレアな主役を演じる成田三樹夫のちょっとぎこちない演技が微笑ましいけれど、脇役のときにあった独特なオーラが薄らいでいるのでやはりこの人は脇でこそ輝く人なんだよなと思ったりもする。ちなみに劇中で成田はある会社の株を買い占めて乗っ取りを企てるが、この作品の12年後の『蘇える金狼』では立場が逆転しているのが面白い。
藤村志保のとある過去が原因で男を信じられなくなった悲劇の悪女の好演が素晴らしく、仲間であり密かに想っていた成田と別れた後の物悲しくも前を向く彼女の姿で締め括られるラストがかっこいい。
いつになくダークな浜村純や小悪党の小松方正の名脇役ぶりも◎。