松浦義英

ファイヤーフォックスの松浦義英のレビュー・感想・評価

ファイヤーフォックス(1982年製作の映画)
2.5
22.06.13:DVD。

高校生の時、初めて出た本作のDVDを借りてみたんだけど初期のDVDは黒潰れが酷すぎて途中で鑑賞中止。
…10年以上観てなかった。
『トップガン2』を観る前にこちらを。

時代故チープなアニメ合成は仕方がないけれど(でも『トップガン』より空中戦わくわくした気がする笑)、
前半部で冴え渡るブルースサーティスの暗闇撮影テクニック。
湖畔の落ち着きに反してダッシュしまくるガントの対比の上手さよ。
モスクワ市内(撮影地はウィーン)の政府要人の写真が並ぶストリートの撮影の上手さよ。
怖いよね。
(モスクワランニングシーンでなよなよしたカップルとすれ違うシーンは
『ダーティハリー1』のゲイとのシーンを意識してるよね笑)

シャワールームのイーストウッドの肉体とソビエト連邦らしい赤いライトと銃を構えるソ連兵のショット。
「あー、イーストウッド組だー!」となる画の決まり具合ですよね。
この時代のイーストウッドのかっこよさは凄いものがあると思う。

ファイヤーフォックスをゆっくりゆっくり奪還してたり、
イーストウッドらしさ爆発の顔パンチを多用しまくりだったり、ちょっと力技が目立っているけど…
協力者とのコンビっぷりで発揮されるイーストウッドの目と口をピクッとさせる様とか、
トラウマに苛まれているイーストウッドの恐怖顔とか、
『アイガーサンクション』以来のメガネイーストウッドとか。
後年のイーストウッド作品の匂いを感じられるような極力BGMを排した作りとか、ラブシーンなしとか、
特殊効果場面はチープなんだけど人物をカメラで捉えるショットのキマリ具合とムダのなさは後年のイーストウッド監督印バリバリっていう。
ウペンスコイの自殺場面の雰囲気なんかもうイーストウッドらしさがバリバリ。
(でもベトナムのトラウマリフレインはイーストウッドの決定打にはなり得なかったね笑
多分ギリギリまで考えてあの画にしたんだろうけど、これまたチープ笑
でも、直前のリンチを受けるイーストウッドがまさに『名無し三部作』風味しかなくて許せてしまうファン心理ですよ)

SNSに『トップガン2はガントの帰還した後の姿』って書き込みがあった。
果たしてどうなのか、観に行きたい。

ただ、俺は『トップガン』も『ライトスタッフ』も『ファイヤーフォックス』も
映画の好みからは大きく外れるんだなということが、
イーストウッド大好きな俺が観た本作で決定的になったようです…。
誤訳の「後部ミサイル」も気になった。
どう考えてもフレアですよ!(笑)
でも、ラストのラスト、左右に揺れまくるファイヤーフォックスを難なく立て直すガントはさすがイーストウッドですよね。
それとドッグファイトの素早く動く背景は素晴らしかった。
そうそう、海面を飛行して水しぶきが上がるのこの作品が初らしいね。

Wikiを観ると原作小説の続編として『ファイヤーフォックスダウン』というのがあるらしい。
本編の直後、落ちるファイヤーフォックスから始まるらしい。
そっちで無双するイーストウッドを観たかったかもしれない…。

なんでガントは最初っからロシア語で考えてファイヤーフォックスを操らなかったんだろう??
あと、仕方ないけれど、ソ連領なのに英語を話す軍人たちに今の感覚だと違和感を持ってしまうよね。
今のイーストウッドなら絶対にすべてロシア語で撮るからね。
前半の作風は好きなんだけど、後半はチープな撮影と大アクションがやっつけ仕事みたいでどうもノレなかった。
『恐怖のメロディ』で徹頭徹尾やりきったから行けるかと思ったんだけど…。
松浦義英

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