このレビューはネタバレを含みます
ウィリアム・バロウズの同名の原作があるにはあるが、その原作もしっかりとした物語ではない。
キーワードとしてドラッグや倒錯した性愛、人間の恐怖の象徴としての害虫、昆虫類、化け物的存在が不条理とともに散りばめられた散文的なものをクローネンバーグが一応物語のように描き下ろしたような内容になっている。
「どんな映画か!?」と尋ねられたとしたら蛭子能収の漫画か、デビット・リンチの「イレイザーヘッド」辺りの作品と似たものと答えようか。
主人公のビル・リー(ピーター・ウェラー) -は害虫駆除員であるところから物語は始まるが、この害虫駆除剤に麻薬性があるらしく、妻が中毒になっている。ビルは北アフリカのインターゾーン市という架空の都市に行くように医者のベンウェイ(ロイ・シャイダー)からチケットをもらうが、この辺りから幻覚なのか現実なのかが曖昧になってくる。
敢えてそれを判然とさせないようにもしている。なぜかビルの身に降り掛かった災難と事件は周囲の皆が当然のように知っている。そして思わぬ「人と人」が繋がっている。自然な形でゲイも入り込んでくる。
「報告書」の提出を求められているビルはタイプライターを買うが、これが突如昆虫とタイプライターが合体した姿になりべらべら喋る。
いくらネタバレレビューだと言ってもバラすネタもない。ドラッグを——は無理として酒をそこそこ呑みながら観るとまた違った「合理性」が浮き上がるのかもしれないが、不条理だらけでサイコな映画としか言えない。