Pinch

裸のランチのPinchのレビュー・感想・評価

裸のランチ(1991年製作の映画)
3.3
ウィリアムズ・バロースは昔何冊か買って読んだと思うがよく分からず、タイトルと不可思議な感触以外はほぼ記憶に残っていない。映画を見て一部のストーリーを断片的に思い出した。

この映画のベースにあるストーリーの枠組は、普通の人気スパイ小説のように至極まっとうなものだと思う。ただ、そのストーリーを支える各部分の因果関係が支離滅裂だったり、各場面が幻覚的でグロテスクだったりするので分けが分からなくなってしまう。ところが、これらの矛盾に満ちた一連の出来事は、ジャンキーであるこの作家の心の中ではしっかり首尾一貫している。このズレが興味深いところだ。ストーリーテリングや精神分析の常識と言えば常識だが。

現世の時間と空間を超越したバローズの独特の魅力は追究に値するかもしれないが、面白いで済まされないという印象が強い。べルべット・アンダーグラウンドの『ヘロイン』を聴く程度に留めておくしかなさそうだ。
Pinch

Pinch