ちろる

松ヶ根乱射事件のちろるのレビュー・感想・評価

松ヶ根乱射事件(2006年製作の映画)
3.6
ここから逃げられない。
逃げられるはずもない。
腐敗した村をきれいにリセットする術なんてあるはずない。
だってとっくに俺も壊れていたから。

田舎の閉塞感をものすごくシュールな山下節。
ある日、見知らぬ女性のひき逃げ事件が発生。
検死の最中に突然遺体が息を吹き返すことが、松ヶ根銃乱射事件へと続く。

登場人物全員壊れてる。
でも、なんとか普通のフリして生きて村の秩序は守られてるように見えてる。

家に帰らない父親、問題ばかり起こす双子の兄、娘の身体を売る父の愛人、冷蔵庫で変なものを冷やす祖父、そしてひき逃げ被害者の女とチンピラ。

どれも極端で、どう見てもダークな展開なのに悲観的な感じはあまりない、ブラックユーモアに満ちている。
さあ、静かに腐敗した村で銃はどこ撃ち込まれるのか?

アメリカだったらきっとコーエン兄弟が作りそう。

そしてなによりもこの作品の肝は川越美和さん演じる被害者女である。
キム兄演じるチンピラ男との敬語のセックスシーンから、だんだん不気味な加害者になっていく、なんとも言えない存在感。
残念ながら川越美和さんは、既にお亡くなりになってしまったらしいのだが、生きていればきっと独特な雰囲気女優さんになっていただろうに残念。
全てをもうとっくに諦めたような細い目もこの主人公の警官役に新井浩文さん、そしてダメ父に三浦友和さん、結構いいキャスティングで楽しめる作品だった。
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