April01

ハリー・ポッターと謎のプリンスのApril01のレビュー・感想・評価

4.3
序盤のロンドンの描写やスラグホーンが住む人気のない寂しい村の様子など、英国風味満載の映像美が素晴らしい。

また舞台がホグワーツに移ってからも、スクール内の様子やホグズミードへお出かけする時の3本の箒など、独特のファンタジー感は平常運転で見ごたえがある。

今作では特に、前作では省かれたグィデッチが復活し、緑の草原を背景とする試合と、冬の真っ白な雪を背景とする試合が対比され、それぞれに雰囲気が違い、絵的にもアートを感じるし、臨場感あふれる競技の様子が効果的に伝わってくる。

スネイプが語る場面が多いので、アラン・リックマンの素敵な低音ボイスを堪能できるのも嬉しい。

スラグホーンを演じるジム・ブロードベントさんは「パディントン」シリーズで骨董品屋を演じているけれど、演技が上手いな~と本当に感嘆する。
特にハグリッドの小屋で酔ってリリーの話になり、ハリーに真実を話すように迫られる場面。彼の秘密を突き止めることが本作を通してキーになる中、ずっとノラリクラリとやってきて、ついに観念するあのシーンは背景も含めて複雑な心情があるだけに深くて見入ってしまう。

一方、謎解きと恋愛と戦いが並行しているので、ふざけた明るさとリアルな暗さのバランスがチグハグとも感じる。
特にハリーとジニーの場面は、改変しすぎ。あれは原作ではクィディッチに勝った試合後の興奮でグリフィンドール勢が談話室で騒ぐ中で、ジニーの炎のような情熱がハリーにぶつかって、それに応えるという成り行きで、それを見守るロンを含めた仲間の視線とかもありつつの、とても素敵な場面なだけに、秘密の部屋で本を隠すために2人きりで、という映画の創作は、ごめんなさい、ダメですよ。
それとトンクスがおかしいことや、その原因も映画では無視してる。2人が居合わせる隠れ穴の場面で、ルーピンへの呼びかけが親しい呼び方になっていることについて、映画は説明できてない。まあ原作読んでるみなさん、察してねってところかな。


原作
思わずニヤリと笑ってしまったのが、スネイプの描写。スネイプに関しては、映像化完璧だなと思えて、他のスネイプは考えられないというくらい、原作以上に体現しているキャラクターだと改めて確信する。その部分というのは、
黒髪ねっとり、マントをバサーとコウモリのようにひるがえして、云々という描写。

映画では一切無視だけれど、ビルとフラーは婚約している。
ビルがグレイバッグに襲われて、マッドアイ・ムーディーに似た顔になるという描写は、後にビルを演じるドーナル・グリーソンはムーディを演じるブレンダンの息子なので、ちょっと気になる一文。

同様に省かれている大きな要素として、トム・リドルの母と父の成り行きの件は、母の報われない愛が切なくて、ダンブルドアが語るように想像になるが、と前置きしてるのが余計に真実はそんな感じなんだろうなと思えて、この部分だけでも1つの物語として完成しそうな想像力を掻き立てられるストーリー性がある。
魔法でトムを恋に落ちさせ、本当の自分を愛して欲しかったから魔法を解く。そしたらロンドンに置き去りにされ、トムだけ村に帰る。女は子供を宿しており、産まれたトム似の子供の名はトム・リドル・マールボロ。

隠れ穴が襲われたり燃えたりベアトリクス・レストレンジを追いかけて戦ったりなどの場面は原作にはない。隠れ穴は次作で本部になるしビルとフラーの結婚式会場にもなる。
April01

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